亜細亜大観/12

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  • 金州城樓 （關東州） 現存の金州城は略々明の洪武十年指揮韋富によつて築造されたものである。寫眞は其の西門にあたる寧海門上の角樓である。城壁上に橫はる大砲は、淸の宣宗が耆英に命じ、渤海の防備を嚴にした際、金州城も亦渤海の要地として大砲十六門を城壁上に架した時の一遺物である。砲身約二、一米　口徑〇、二九米で道光二十一年鑄造の銘がある。遠くに見ゆる山は日露戰史に名高い南山である。又此の西門外は南山戰で第四師團の苦戰の地である。
    金州城樓 （關東州）

    現存の金州城は略々明の洪武十年指揮韋富によつて築造されたものである。寫眞は其の西門にあたる寧海門上の角樓である。城壁上に橫はる大砲は、淸の宣宗が耆英に命じ、渤海の防備を嚴にした際、金州城も亦渤海の要地として大砲十六門を城壁上に架した時の一遺物である。砲身約二、一米　口徑〇、二九米で道光二十一年鑄造の銘がある。遠くに見ゆる山は日露戰史に名高い南山である。又此の西門外は南山戰で第四師團の苦戰の地である。
  • 三烈士殉節之處 （關東州） 金州城の西門外に在り。三列士とは明治二十七、八年戰役に於て、淸國の機密を探ぐり、我が日本軍の策戰に多大なる貢獻をし、又第二軍の通譯として從軍し金州方面の敵狀偵察の大任に當り、不幸にも淸軍に捕はれ明治二十七年十月三十日（？）敵刄に斃れた山崎羔三郎（福岡縣三十一歳）鐘崎三郎（福岡縣二十六歳）藤崎秀（鹿兒島縣二十三歳）の三士を云ふのである。此の地は實に三士の刑を受け一時葬られた處である。大正二年碑を建て三士殉節の遺跡を保存し功を永へに傳へてゐる。
    三烈士殉節之處 （關東州）

    金州城の西門外に在り。三列士とは明治二十七、八年戰役に於て、淸國の機密を探ぐり、我が日本軍の策戰に多大なる貢獻をし、又第二軍の通譯として從軍し金州方面の敵狀偵察の大任に當り、不幸にも淸軍に捕はれ明治二十七年十月三十日（？）敵刄に斃れた山崎羔三郎（福岡縣三十一歳）鐘崎三郎（福岡縣二十六歳）藤崎秀（鹿兒島縣二十三歳）の三士を云ふのである。此の地は實に三士の刑を受け一時葬られた處である。大正二年碑を建て三士殉節の遺跡を保存し功を永へに傳へてゐる。
  • 鐵牛 （關東州） 鐵牛は金州城西門玉皇廟前にあり、長さ約五尺八寸幅七寸五分ばかりの×字形をなせるもので、土人之を鐵牛と云ひ、住古寶劔等と共に西海中より出たもので、年々東方山地に向ひ其の歩みを移しつゝありと傳てゐる。蓋しこれは昔の擊船杭なるべく、其の歩みを東方に運ぶとは素朴な土人が海岸線の西退に氣附かぬ為であらう。又此の鐵牛に關しては種々の傳說があり、鐵牛がなく時、或はこれを掘らうとすると天地異變があると迷信してゐる。
    鐵牛 （關東州）

    鐵牛は金州城西門玉皇廟前にあり、長さ約五尺八寸幅七寸五分ばかりの×字形をなせるもので、土人之を鐵牛と云ひ、住古寶劔等と共に西海中より出たもので、年々東方山地に向ひ其の歩みを移しつゝありと傳てゐる。蓋しこれは昔の擊船杭なるべく、其の歩みを東方に運ぶとは素朴な土人が海岸線の西退に氣附かぬ為であらう。又此の鐵牛に關しては種々の傳說があり、鐵牛がなく時、或はこれを掘らうとすると天地異變があると迷信してゐる。
  • 閻氏の墓 （關東州） 金州の東北十餘町閻家樓屯に在り。滿洲國濱江省長閻傳紱氏一家は古來金州の名門にして、其の祖閻福陞は欽命護理金州等處副都統協領銜佐領であつた。寫眞前面の碑は乾隆及道光年間のもので、榮域を卜した由來や、祖先の德等を述べてある。｜尚山上に見ゆる碑は乃木將軍の令息勝典中尉の記念碑で、山下の家屋は明治三十七年五月二十六日南山攻擊戰の時の野戰病院たりし處である。勝典中尉は金州東門外で敵彈を受け此の地で歿したのである。
    閻氏の墓 （關東州）

    金州の東北十餘町閻家樓屯に在り。滿洲國濱江省長閻傳紱氏一家は古來金州の名門にして、其の祖閻福陞は欽命護理金州等處副都統協領銜佐領であつた。寫眞前面の碑は乾隆及道光年間のもので、榮域を卜した由來や、祖先の德等を述べてある。｜尚山上に見ゆる碑は乃木將軍の令息勝典中尉の記念碑で、山下の家屋は明治三十七年五月二十六日南山攻擊戰の時の野戰病院たりし處である。勝典中尉は金州東門外で敵彈を受け此の地で歿したのである。
  • 小廟 （關東州） 此の小廟は金州城外閻家樓屯に在り。正面に龍王、牛王、虫王、左右に土地神、山神を祀つてゐるのであるが、廟前に積みあげられた男根形のものは所謂道祖神、幸の神であらうと赤松博士等が語つてゐる。併し其れに對して土民は未だ明瞭な回答を與へてくれてゐないが或る者が云ふやうに石獅子や狼犬の變化したものとしても、本廟の如く多數の石獅子のある事も妙なもので、寧ろ性器崇拜の遺物と見てもよいであるまいか。
    小廟 （關東州）

    此の小廟は金州城外閻家樓屯に在り。正面に龍王、牛王、虫王、左右に土地神、山神を祀つてゐるのであるが、廟前に積みあげられた男根形のものは所謂道祖神、幸の神であらうと赤松博士等が語つてゐる。併し其れに對して土民は未だ明瞭な回答を與へてくれてゐないが或る者が云ふやうに石獅子や狼犬の變化したものとしても、本廟の如く多數の石獅子のある事も妙なもので、寧ろ性器崇拜の遺物と見てもよいであるまいか。
  • 遼東金州先師廟碑 （金州衞儒學重修碑） 金州城內孔子廟境內にあり。萬曆三十五年西紀一六〇八年即ち朝鮮文祿役九年目に建立された、倭冠に關する重要なる碑である。文中に『倭奴犯與國（倭奴與國ヲ犯シテ）。糜國家錢穀數百萬（國家ノ錢穀ヲ糜スコルト數百萬）。碧蹄雲黯（碧蹄雲黯クシテ）。鴨綠波腥（鴨綠波腥ク）。僅僅束甲鳴劔去（僅僅甲ヲ束ネ劔ヲ鳴シテ去ル）。而高句麗之元氣已羸毛不能支（而シテ高句麗之元氣已ニ羸毛シテ支フル能ハズ）。此震于鄰也（此レ隣ニ震スルナリ）。大將軍建旌旄出塞（大將軍旌旄ヲ建テ塞ヲ出テ）。鼓聲不起（鼓聲起ラズ）。全軍覆沒（全軍覆沒シ）。屋瓦皆振（屋瓦皆振ヒ）。濤濤累卵危矣（濤濤トシテ累卵危シ）』とある。
    遼東金州先師廟碑 （金州衞儒學重修碑）

    金州城內孔子廟境內にあり。萬曆三十五年西紀一六〇八年即ち朝鮮文祿役九年目に建立された、倭冠に關する重要なる碑である。文中に『倭奴犯與國（倭奴與國ヲ犯シテ）。糜國家錢穀數百萬（國家ノ錢穀ヲ糜スコルト數百萬）。碧蹄雲黯（碧蹄雲黯クシテ）。鴨綠波腥（鴨綠波腥ク）。僅僅束甲鳴劔去（僅僅甲ヲ束ネ劔ヲ鳴シテ去ル）。而高句麗之元氣已羸毛不能支（而シテ高句麗之元氣已ニ羸毛シテ支フル能ハズ）。此震于鄰也（此レ隣ニ震スルナリ）。大將軍建旌旄出塞（大將軍旌旄ヲ建テ塞ヲ出テ）。鼓聲不起（鼓聲起ラズ）。全軍覆沒（全軍覆沒シ）。屋瓦皆振（屋瓦皆振ヒ）。濤濤累卵危矣（濤濤トシテ累卵危シ）』とある。
  • 薩璊 （關東州） 金州城內には薩璊が八人居り、大仙或は打鼓子等と稱されて居る。皆女巫である。胡仙を祀り人の治療の依頼を受ければ、先づ顏を洗ひ淨め神衣として裙子を穿き、神壇に蠟燭を点火し、香爐に線香を立て、次に燭れを黃紙に移し、室の入口で燒き、神鼓を取り、靜に打ちながら祭神に一禮して椅子にかけて、太鼓の裏にある鳴金を鳴らし神歌を唱ひ、唱ひ終つてから依頼者に對して種々の問ひを發し、治療の法を行ひ終ると再び鼓を打き暫くして手をもつて顏をこすり息を吐き常態に歸るのが例である。
    薩璊 （關東州）

    金州城內には薩璊が八人居り、大仙或は打鼓子等と稱されて居る。皆女巫である。胡仙を祀り人の治療の依頼を受ければ、先づ顏を洗ひ淨め神衣として裙子を穿き、神壇に蠟燭を点火し、香爐に線香を立て、次に燭れを黃紙に移し、室の入口で燒き、神鼓を取り、靜に打ちながら祭神に一禮して椅子にかけて、太鼓の裏にある鳴金を鳴らし神歌を唱ひ、唱ひ終つてから依頼者に對して種々の問ひを發し、治療の法を行ひ終ると再び鼓を打き暫くして手をもつて顏をこすり息を吐き常態に歸るのが例である。
  • 天后宮の戲台 （關東州） 天后宮の正殿前にあり。天后聖母に奉納する芝居をなす處である。本戲台の如く直ちに正殿から廻廓によつてつながる形式のものは關東州では此處一箇所だけで、又斯く壯麗なものは尠くない。
    天后宮の戲台 （關東州）

    天后宮の正殿前にあり。天后聖母に奉納する芝居をなす處である。本戲台の如く直ちに正殿から廻廓によつてつながる形式のものは關東州では此處一箇所だけで、又斯く壯麗なものは尠くない。
  • 天后宮の正殿 （顯應宮） 金州內會舘廟街に在り。本廟は乾隆三十六年の劍建の由來に關する記事あり、貿易品に對して附加稅の如き方法を取り、本廟建設資金を得たものゝ如くである。天后聖母は海上の平安を守護し、又求子を禱る者あらば子を授くと云はれてゐる。｜尚明治三十七年戰役の時、從軍記者として正岡子規が此の境內に滯在したことがある。「古寺や戰のあと朧月」の句は或は此の廟にて咏じたものか。
    天后宮の正殿 （顯應宮）

    金州內會舘廟街に在り。本廟は乾隆三十六年の劍建の由來に關する記事あり、貿易品に對して附加稅の如き方法を取り、本廟建設資金を得たものゝ如くである。天后聖母は海上の平安を守護し、又求子を禱る者あらば子を授くと云はれてゐる。｜尚明治三十七年戰役の時、從軍記者として正岡子規が此の境內に滯在したことがある。「古寺や戰のあと朧月」の句は或は此の廟にて咏じたものか。
  • 天后宮の內陣 （關東州） 天后宮正殿の内陣の一部で、小船を供へてあるのは滿支人の風習として、自家で船を造りし時は、其の船の平安を祈るため模型を造り天后宮に奉納するのが普通になつて居る。大さいものになると五尺もある立派なものがある。
    天后宮の內陣 （關東州）

    天后宮正殿の内陣の一部で、小船を供へてあるのは滿支人の風習として、自家で船を造りし時は、其の船の平安を祈るため模型を造り天后宮に奉納するのが普通になつて居る。大さいものになると五尺もある立派なものがある。
  • 金州志善堂 金州城内西門の近くの旗倉街に在り。門の聯に「慈善機関地」「衛生道理門」とあるが如く、此の志善堂は一種の慈善機関であると共に酒、阿片嗎啡等を好む者を矯正する処である。宗教上から云へば在理教に属してゐる。在理教の教祖は明万暦進士楊莱如の始むる処にして、儒釈道の三教帰一を説き煙酒を戒む。在理教の内容に就いては秘密結社的な処あり、深く知る事は出来ない。｜写真は志善堂の内陣で、正面に釈迦観音弥勒等を左に揚祖、右に孔子、老子を祀る。在理教の一特色として瓢箪を供へる風あり、其の理由に至つては口を喊して語らないが古来瓢箪と仙人とは関係深く、瓢箪を用ひて、其の中から青竜刀や神針或は蝗や神鷹、駒、神薬等を出した仙術は人口に膾炙する処であれば、必ずや在理教と瓢箪は相当に関係が深いものがあらう。写真の中央の瓢箪は四五十年も磨かれて居るとの事で立派なものである
    金州志善堂

    金州城内西門の近くの旗倉街に在り。門の聯に「慈善機関地」「衛生道理門」とあるが如く、此の志善堂は一種の慈善機関であると共に酒、阿片嗎啡等を好む者を矯正する処である。宗教上から云へば在理教に属してゐる。在理教の教祖は明万暦進士楊莱如の始むる処にして、儒釈道の三教帰一を説き煙酒を戒む。在理教の内容に就いては秘密結社的な処あり、深く知る事は出来ない。｜写真は志善堂の内陣で、正面に釈迦観音弥勒等を左に揚祖、右に孔子、老子を祀る。在理教の一特色として瓢箪を供へる風あり、其の理由に至つては口を喊して語らないが古来瓢箪と仙人とは関係深く、瓢箪を用ひて、其の中から青竜刀や神針或は蝗や神鷹、駒、神薬等を出した仙術は人口に膾炙する処であれば、必ずや在理教と瓢箪は相当に関係が深いものがあらう。写真の中央の瓢箪は四五十年も磨かれて居るとの事で立派なものである
  • 金州關帝廟の大鐵鉾 金州城内の中央に関帝廟があるが、其の廟内に大鉄鉾がある。伝説によれば昔関帝の銅像と共に西海中より得たものと云ふ。大鉄鉾の長さは二・九八米で鉾の身が約一・〇五米、柄が一・九三米で、其の重さは約八十斤あると云ふ話である。｜尚本廟に祀る関帝の像は前期の如く銅製で西海より得て運搬して来たが現在の地で動かなくなつたので、此の地に廟を立てゝ祀るやうになつたと伝へ、又銅像の下に井戸があり銅像を動かすと水が井戸より湧出して金州城が水中に没すると恐れてゐる。
    金州關帝廟の大鐵鉾

    金州城内の中央に関帝廟があるが、其の廟内に大鉄鉾がある。伝説によれば昔関帝の銅像と共に西海中より得たものと云ふ。大鉄鉾の長さは二・九八米で鉾の身が約一・〇五米、柄が一・九三米で、其の重さは約八十斤あると云ふ話である。｜尚本廟に祀る関帝の像は前期の如く銅製で西海より得て運搬して来たが現在の地で動かなくなつたので、此の地に廟を立てゝ祀るやうになつたと伝へ、又銅像の下に井戸があり銅像を動かすと水が井戸より湧出して金州城が水中に没すると恐れてゐる。
  • 城隍廟內蟒大帥廟 金州城内城隍廟の正殿前に周囲四・二米の大きな槐樹があり神木として小廟を造り祀つてゐる。蟒大師之神位、蟒老将軍之位、黒蟒将軍之位等と書ける神牌が供へられてゐる。此の神木の中には数十尺の大蟒が棲み、これを見る者病を得ると云ふ。｜尚城隍廟は金州城の鎮守の神で、誠応霊佑侯金州城隍之神位を安置してある。
    城隍廟內蟒大帥廟

    金州城内城隍廟の正殿前に周囲四・二米の大きな槐樹があり神木として小廟を造り祀つてゐる。蟒大師之神位、蟒老将軍之位、黒蟒将軍之位等と書ける神牌が供へられてゐる。此の神木の中には数十尺の大蟒が棲み、これを見る者病を得ると云ふ。｜尚城隍廟は金州城の鎮守の神で、誠応霊佑侯金州城隍之神位を安置してある。
  • 龍王廟 金州城の西北に向ひ行くこと十数町にして、金州湾に屹立せる丘上に一宇を見る。これ金州の竜王廟にして、風光明媚を以て世に知らる。廟には竜王電公・電母・風伯・雨師・雨浪神等を祀る。｜廟後に塚の如きものあり、土人伝へて云ふ。雨師小伯竜の母の墓と。毎年秋になり霜が降る頃になると、小伯竜は天より降り母の墓に詣り、翌年の風雨雪を下す地方の教示を受け帰る。故に常に竜王に祈り、雨雪の順調を請はねばならぬと云ふ｜又廟の附近に刀や蛙や魚等に幾分似た石塊ありこれ等に就いて下の如き伝説がある。昔々大昔、蛙と魚の主が此の地方に棲み時々大水を出し、村の人々を溺死せしめたり畠を荒したりするので、村人達は頗る困り、関公に願ひ退治を請ふた。関公は村人達の難儀を救はんため大刀を以て仇をなす蛙と魚の主を斬り殺した。其の時の魚と蛙と刀は化して石になつたと伝ふ。蓋し此の伝説は此の地方が北大河の洪水の結果害を受けたる寓意であらう。
    龍王廟

    金州城の西北に向ひ行くこと十数町にして、金州湾に屹立せる丘上に一宇を見る。これ金州の竜王廟にして、風光明媚を以て世に知らる。廟には竜王電公・電母・風伯・雨師・雨浪神等を祀る。｜廟後に塚の如きものあり、土人伝へて云ふ。雨師小伯竜の母の墓と。毎年秋になり霜が降る頃になると、小伯竜は天より降り母の墓に詣り、翌年の風雨雪を下す地方の教示を受け帰る。故に常に竜王に祈り、雨雪の順調を請はねばならぬと云ふ｜又廟の附近に刀や蛙や魚等に幾分似た石塊ありこれ等に就いて下の如き伝説がある。昔々大昔、蛙と魚の主が此の地方に棲み時々大水を出し、村の人々を溺死せしめたり畠を荒したりするので、村人達は頗る困り、関公に願ひ退治を請ふた。関公は村人達の難儀を救はんため大刀を以て仇をなす蛙と魚の主を斬り殺した。其の時の魚と蛙と刀は化して石になつたと伝ふ。蓋し此の伝説は此の地方が北大河の洪水の結果害を受けたる寓意であらう。
  • 平山佛爺洞 （一） 仙人 金州城北一里半、平山（三四一米）の嶺に大洞窟があり、佛爺洞と云ふ。洞内に入ること十數米の奥まりたる處に、自然石を刻みて出來た大石佛一座慈光を垂れてゐる。其の側に石彭と稱するものありて、叩けば妙音を發する。蓋し自然に出來た空洞の音である。又右に曲り進まば尚十數米入る事を得、其の行きづまりたる處に近く小石佛一座がある。｜此の佛爺洞の文献に見ゆるは、明の遼東志を以て最古とする。即ち同志金州衞山川地理圖に「平山佛洞」とあり、又全遼志卷之四故蹟志に平山佛洞金州城西北十里有泉滴佛前石鉢とある。又洞口前に光緒十五年小陽月建立の黃帥德政碑等によれば、光緒十三年（明治十七年）の春、黃士林なる者金州に駐せし時、其夫人病に罹り、此の廟に祈願し應驗ありしために新に道路を改修し廟宇を建立し佛恩に報ずと云ふ。｜今此の廟に住する者は僧ではなく道士であり、世に仙人と呼ばれてゐる。風貌頗る仙骨を帶びてゐる。寫眞は洞窟內にて冥想に耽ける仙人である
    平山佛爺洞 （一） 仙人

    金州城北一里半、平山（三四一米）の嶺に大洞窟があり、佛爺洞と云ふ。洞内に入ること十數米の奥まりたる處に、自然石を刻みて出來た大石佛一座慈光を垂れてゐる。其の側に石彭と稱するものありて、叩けば妙音を發する。蓋し自然に出來た空洞の音である。又右に曲り進まば尚十數米入る事を得、其の行きづまりたる處に近く小石佛一座がある。｜此の佛爺洞の文献に見ゆるは、明の遼東志を以て最古とする。即ち同志金州衞山川地理圖に「平山佛洞」とあり、又全遼志卷之四故蹟志に平山佛洞金州城西北十里有泉滴佛前石鉢とある。又洞口前に光緒十五年小陽月建立の黃帥德政碑等によれば、光緒十三年（明治十七年）の春、黃士林なる者金州に駐せし時、其夫人病に罹り、此の廟に祈願し應驗ありしために新に道路を改修し廟宇を建立し佛恩に報ずと云ふ。｜今此の廟に住する者は僧ではなく道士であり、世に仙人と呼ばれてゐる。風貌頗る仙骨を帶びてゐる。寫眞は洞窟內にて冥想に耽ける仙人である
  • 平山佛爺洞 （二） 大石佛 佛爺洞の大石佛は洞窟の自然石を巧みに利用して、刻みあげたものである。石佛は何に佛なるか明言することは出來ないが、獅子の背上にある蓮臺に在る處から考へれば、或は文珠菩薩ではあるまいかと推考するものである。勿論普通文珠菩薩の像の具備すべき種々の條件を總べて兼ね備へてゐるとは云はれないのである。從つて學者の御敎示を得ば幸ひである。｜尚又本大石佛の彫刻年代は全く不詳ではあるが既に明代を下らぬ事は遼東志の記事でも明かである。併し數年前有名な金石學者羅振玉氏が、この石佛の寫眞を見て六朝頃のものと云はれたと云ふ事を某氏より聞いてゐるが、果して然るかは研究の餘地があるまいかと思つてゐる。｜若し本石佛が文珠菩薩とすれば、滿洲の文珠崇拜と關係を有し、尠くとも遼代頃まで溯り考へられはしまいかと思ふものである。
    平山佛爺洞 （二） 大石佛

    佛爺洞の大石佛は洞窟の自然石を巧みに利用して、刻みあげたものである。石佛は何に佛なるか明言することは出來ないが、獅子の背上にある蓮臺に在る處から考へれば、或は文珠菩薩ではあるまいかと推考するものである。勿論普通文珠菩薩の像の具備すべき種々の條件を總べて兼ね備へてゐるとは云はれないのである。從つて學者の御敎示を得ば幸ひである。｜尚又本大石佛の彫刻年代は全く不詳ではあるが既に明代を下らぬ事は遼東志の記事でも明かである。併し數年前有名な金石學者羅振玉氏が、この石佛の寫眞を見て六朝頃のものと云はれたと云ふ事を某氏より聞いてゐるが、果して然るかは研究の餘地があるまいかと思つてゐる。｜若し本石佛が文珠菩薩とすれば、滿洲の文珠崇拜と關係を有し、尠くとも遼代頃まで溯り考へられはしまいかと思ふものである。
  • 平山佛爺洞より渤海を望む 仏爺廟前に立ち、瞳を遠く渤海に放てば、一望潤然、海天乃ち開け、碧瀝渺々、海路遥かに小島点在し、漁舟霞を乗せて駛り、誠に風光佳絶の仙境である。
    平山佛爺洞より渤海を望む

    仏爺廟前に立ち、瞳を遠く渤海に放てば、一望潤然、海天乃ち開け、碧瀝渺々、海路遥かに小島点在し、漁舟霞を乗せて駛り、誠に風光佳絶の仙境である。
  • 閻氏の邸宅 金州城内には昔を偲ぶ立派な大邸宅が多い其の中でも閻家相氏の邸宅は其の代表的のものと云ふ事が出来る。閻氏は二百年来金州の名家として続いて来てゐる。現在の邸宅は数度大改築をしてゐるとの事であるが、今から百年ばかり前、北平より工人を呼び寄せ建築したものであるから、北平の建築様式を多分に存してゐる。今邸宅の様式を述べれば大門の両側に門房、東西の外側に対立して各群房があり、大門を入ると第二門があり、その内の正面に本写真の如き正房即ち大庁があり、又東西に対立して各廂房がある。尚正房の裏に十三間連脊の家屋があるが、今は区切つて分家の浜江省長閻伝紱氏の邸宅となつてゐる
    閻氏の邸宅

    金州城内には昔を偲ぶ立派な大邸宅が多い其の中でも閻家相氏の邸宅は其の代表的のものと云ふ事が出来る。閻氏は二百年来金州の名家として続いて来てゐる。現在の邸宅は数度大改築をしてゐるとの事であるが、今から百年ばかり前、北平より工人を呼び寄せ建築したものであるから、北平の建築様式を多分に存してゐる。今邸宅の様式を述べれば大門の両側に門房、東西の外側に対立して各群房があり、大門を入ると第二門があり、その内の正面に本写真の如き正房即ち大庁があり、又東西に対立して各廂房がある。尚正房の裏に十三間連脊の家屋があるが、今は区切つて分家の浜江省長閻伝紱氏の邸宅となつてゐる
  • 乃木勝典氏戰死の家 金州城の東北閻家楼会閻家楼屯七十二番地に在り。乃木大将の長男勝典少尉（二十六歳）が明治三十七年五月二十六日早朝歩兵第十五聯隊第十一中隊の小隊長として、金州城東門を攻撃したる際、城壁上から発射した露兵の小銃弾の為めに腹部に致命的戦傷を受け、此の閻家楼第二野戦病院に収容せられ、同日歩兵中尉に昇級し、翌二十七日午後死亡された写真は傷死された処の家屋である。尚金州城の東南八里庄に乃木中尉の碑があるが、其れは戦死の場所でなく、一時屍体を葬りたる処である。
    乃木勝典氏戰死の家

    金州城の東北閻家楼会閻家楼屯七十二番地に在り。乃木大将の長男勝典少尉（二十六歳）が明治三十七年五月二十六日早朝歩兵第十五聯隊第十一中隊の小隊長として、金州城東門を攻撃したる際、城壁上から発射した露兵の小銃弾の為めに腹部に致命的戦傷を受け、此の閻家楼第二野戦病院に収容せられ、同日歩兵中尉に昇級し、翌二十七日午後死亡された写真は傷死された処の家屋である。尚金州城の東南八里庄に乃木中尉の碑があるが、其れは戦死の場所でなく、一時屍体を葬りたる処である。
  • 金州副都統衙門の大門 金州城内東街に在り。現在金州警察署となり屡改造されてはゐるが、建物は殆ど当時のものである。金州に副都統衙門が設置されたのは清の道光二十三年（西紀一八四三）で渤海の海防を厳にするため熊岳城の副都統衙門を移したものある。金州副都統は奉天に駐する盛京将軍の支配下にあり、蓋州（蓋平）以南の遼東半島の軍事及び人に関する事項に就いて管掌してゐた。
    金州副都統衙門の大門

    金州城内東街に在り。現在金州警察署となり屡改造されてはゐるが、建物は殆ど当時のものである。金州に副都統衙門が設置されたのは清の道光二十三年（西紀一八四三）で渤海の海防を厳にするため熊岳城の副都統衙門を移したものある。金州副都統は奉天に駐する盛京将軍の支配下にあり、蓋州（蓋平）以南の遼東半島の軍事及び人に関する事項に就いて管掌してゐた。
  • 標題なし （大和尚山の山城）
    標題なし （大和尚山の山城）

  • 大和尚山の深谿と古城門址 大和尚山の西南部は、千仭の深渓をなし、奇岩幽谷にそゝり立ち、関東州随一の奇勝をなす、｜深渓に入ること久しからずして、石塁の崩壊せるものを見るべし。これは山上の城塞と共に高句麗時代に造りたるものにして、城門の址ならん。此処は谷の最も狭き処にして約二十三米に過ぎぬこれより尚進むこと約数百米滴水罅といふ泉の湧く附近に石塁の崩れたるものあり。これは第二の防禦線なるべし。｜（印画の複製を禁ず）
    大和尚山の深谿と古城門址

    大和尚山の西南部は、千仭の深渓をなし、奇岩幽谷にそゝり立ち、関東州随一の奇勝をなす、｜深渓に入ること久しからずして、石塁の崩壊せるものを見るべし。これは山上の城塞と共に高句麗時代に造りたるものにして、城門の址ならん。此処は谷の最も狭き処にして約二十三米に過ぎぬこれより尚進むこと約数百米滴水罅といふ泉の湧く附近に石塁の崩れたるものあり。これは第二の防禦線なるべし。｜（印画の複製を禁ず）
  • 唐王殿石彭寺 （唐王殿石彭寺　（写真は山門）） 唐王殿石彭寺は大和尚山の西南にあり。其の創建の年代は不明なれど、山門の傍にある道光十年（西紀一八三一）建立の唐王殿碑記及び仏殿内の磬の銘に乾隆四十六年（西紀一七八一）とあるより推せば相当古きものならん。併し唐王殿碑記中にある如き唐の太宗高句麗征伐の際此処に　を駐めし故に唐王殿と云ふとは事実にあらざる伝説のみ｜仏殿には釈迦牟尼仏の像を安置し、其の前に唐太宗真観皇帝之位と書せる牌位あり、これは蓋し唐が此の地の高句麗を征せしことに因み、数奇の土民が唐の太宗の牌位を祀り唐王殿と称せしなるべし。｜（印画の複製を禁ず）
    唐王殿石彭寺 （唐王殿石彭寺　（写真は山門））

    唐王殿石彭寺は大和尚山の西南にあり。其の創建の年代は不明なれど、山門の傍にある道光十年（西紀一八三一）建立の唐王殿碑記及び仏殿内の磬の銘に乾隆四十六年（西紀一七八一）とあるより推せば相当古きものならん。併し唐王殿碑記中にある如き唐の太宗高句麗征伐の際此処に　を駐めし故に唐王殿と云ふとは事実にあらざる伝説のみ｜仏殿には釈迦牟尼仏の像を安置し、其の前に唐太宗真観皇帝之位と書せる牌位あり、これは蓋し唐が此の地の高句麗を征せしことに因み、数奇の土民が唐の太宗の牌位を祀り唐王殿と称せしなるべし。｜（印画の複製を禁ず）
  • 傳說唐太宗の養病床 唐の太宗高句麗を征し、金州に輦を駐めし際、病を得て、大和尚山に静養せし時、起臥に使用せりといふ所謂養病床なる表面平なる巨石二個、唐王殿石彭寺の西傍に存す、一は長さ約二・五米、幅約一・五米、厚さ約〇・四米、他は長さ約二米、幅一・五米、厚さ約〇・四米ばかりあり。尚石床上には石枕あり。此の地は前面遠く海を望み、眺望頗るよく、又一方山に囲まれ暖く、或は養病に適せんか。｜併し此の石床は禅僧の打座に用ひしものなるべし。｜（印画の複製を禁ず）
    傳說唐太宗の養病床

    唐の太宗高句麗を征し、金州に輦を駐めし際、病を得て、大和尚山に静養せし時、起臥に使用せりといふ所謂養病床なる表面平なる巨石二個、唐王殿石彭寺の西傍に存す、一は長さ約二・五米、幅約一・五米、厚さ約〇・四米、他は長さ約二米、幅一・五米、厚さ約〇・四米ばかりあり。尚石床上には石枕あり。此の地は前面遠く海を望み、眺望頗るよく、又一方山に囲まれ暖く、或は養病に適せんか。｜併し此の石床は禅僧の打座に用ひしものなるべし。｜（印画の複製を禁ず）
  • 標題なし
    標題なし

  • 觀音閣勝水寺の洞窟 観音閣勝水寺の山門をくゞると、高さ五米余り、長さ約九米、奥行約四米ばかりの巨洞があり、其の中に堂宇があり、入口に一洞天等の扁額をかゝぐ、正面に千手観音菩薩、その背後に釈迦及び十六羅漢の塑像を安置す。庭中に一小井あり、深さ一〇米余、水極めて清澄、勝水寺の名之に因むと云ふ。遊覧の士赴けば汲みて荼を沸かして供す。閣楼に登れば蔚然たる老樹、遥かに大連湾を臨み景致誠に佳なり。｜（印画の複製を禁ず）
    觀音閣勝水寺の洞窟

    観音閣勝水寺の山門をくゞると、高さ五米余り、長さ約九米、奥行約四米ばかりの巨洞があり、其の中に堂宇があり、入口に一洞天等の扁額をかゝぐ、正面に千手観音菩薩、その背後に釈迦及び十六羅漢の塑像を安置す。庭中に一小井あり、深さ一〇米余、水極めて清澄、勝水寺の名之に因むと云ふ。遊覧の士赴けば汲みて荼を沸かして供す。閣楼に登れば蔚然たる老樹、遥かに大連湾を臨み景致誠に佳なり。｜（印画の複製を禁ず）
  • 弘治三年重修勝水寺碑 観音閣勝水寺境内にある古城中、最も古きものは弘治三年（西紀一四九一）夏陸月朔旦立の重修勝水寺碑あり。本碑は大和尚山卑沙城説の有力なる資料の一として世に知らる。今其れに関する記事を摘載すれば左の如し。｜「群城東去二十里。有山一峙。曰大黒山。松柏森欝。凌漢衝霄。翼凰山枕鯨海。蒭蕘雉兎者往焉。絶頂有井二眼。山畔有城一囲。黄唐太宗避兵所制。伝所謂卑沙城是」。｜右碑記中大和尚山の山城が唐の太宗兵を避ぐる為め築造せし如くあれど、唐の太宗此の地に来る史実なければ誤りなること明かなり。｜（印画の複製を禁ず）
    弘治三年重修勝水寺碑

    観音閣勝水寺境内にある古城中、最も古きものは弘治三年（西紀一四九一）夏陸月朔旦立の重修勝水寺碑あり。本碑は大和尚山卑沙城説の有力なる資料の一として世に知らる。今其れに関する記事を摘載すれば左の如し。｜「群城東去二十里。有山一峙。曰大黒山。松柏森欝。凌漢衝霄。翼凰山枕鯨海。蒭蕘雉兎者往焉。絶頂有井二眼。山畔有城一囲。黄唐太宗避兵所制。伝所謂卑沙城是」。｜右碑記中大和尚山の山城が唐の太宗兵を避ぐる為め築造せし如くあれど、唐の太宗此の地に来る史実なければ誤りなること明かなり。｜（印画の複製を禁ず）
  • 朝陽寺 朝陽寺は金州駅の東北約二里、大和尚山の西麓にある古刹にして、唐建説あれども信ずべくもなし。明の正徳六年（西紀一五一一）胡文蕭彬等の重修の碑あれば尠くも五百年は下らざるべし。古は明秀寺と称せしこと境内の乾隆五十九年（西紀一七九五）の碑文中に見ゆ。朝陽寺の名は道光二十九年（西紀一八四九）の碑に始めて現はる。故に今より八十余年前に朝陽寺と改称せしものならん。寺名の由来に就いて老僧曰く、「寺を環る皆山にして層巒畳翠、清渓長流、涓々として絶えず山明水秀、故に明秀寺と命じ、又隆冬に値ひ朔風勁せず、花草猶存し、日光照照和靄春の如けれは朝陽寺と称せるならん」と。｜本堂には釈迦を中央として左、右に文珠普賢の両菩薩を安置する外、観音地蔵韋陀天王托塔李天王等を祀る。｜（印画の複製を禁ず）
    朝陽寺

    朝陽寺は金州駅の東北約二里、大和尚山の西麓にある古刹にして、唐建説あれども信ずべくもなし。明の正徳六年（西紀一五一一）胡文蕭彬等の重修の碑あれば尠くも五百年は下らざるべし。古は明秀寺と称せしこと境内の乾隆五十九年（西紀一七九五）の碑文中に見ゆ。朝陽寺の名は道光二十九年（西紀一八四九）の碑に始めて現はる。故に今より八十余年前に朝陽寺と改称せしものならん。寺名の由来に就いて老僧曰く、「寺を環る皆山にして層巒畳翠、清渓長流、涓々として絶えず山明水秀、故に明秀寺と命じ、又隆冬に値ひ朔風勁せず、花草猶存し、日光照照和靄春の如けれは朝陽寺と称せるならん」と。｜本堂には釈迦を中央として左、右に文珠普賢の両菩薩を安置する外、観音地蔵韋陀天王托塔李天王等を祀る。｜（印画の複製を禁ず）
  • 響水觀 （寫眞は門） 響水觀は朝陽寺の北約五丁の處に在り。今道士住して響水觀と稱するも元は佛寺なるべし。其の創建の時代不明なれども乾隆元年（西紀一七三六）重修の記一碑にあれば相當古きものならん。門を入れば后土殿あり、殿内に皇天后土の額を中央にして、左に慈雲普渡、右に煉石補天の額をかゝく。其の額の下に后土、觀音、女媧の塑像を安置す。｜境内に日露の役明治三十七年五月南山攻擊の際伏見大將宮殿下羽旆を駐められし記念碑あり。｜（印畫の複製を禁ず）
    響水觀 （寫眞は門）

    響水觀は朝陽寺の北約五丁の處に在り。今道士住して響水觀と稱するも元は佛寺なるべし。其の創建の時代不明なれども乾隆元年（西紀一七三六）重修の記一碑にあれば相當古きものならん。門を入れば后土殿あり、殿内に皇天后土の額を中央にして、左に慈雲普渡、右に煉石補天の額をかゝく。其の額の下に后土、觀音、女媧の塑像を安置す。｜境内に日露の役明治三十七年五月南山攻擊の際伏見大將宮殿下羽旆を駐められし記念碑あり。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 瑤琴洞と遊僊床 響水観の境内に瑶琴洞なる洞窟あり。清冽掬すべき泉湧出して細流となり、洗薬池に入り、更に竜口より天水壷へと涓々として渓間を流る。蓋し響水観の名或は之に因めるか。境内静閑にして樹木皆風韻を帯び婉も仙境の趣きあり。｜洞の傍に遊僊床なる石床二個あり、道士此の床に来りて静に冥想に耽り、俗を離れて仙遊するといふ。｜（印画の複製を禁ず）
    瑤琴洞と遊僊床

    響水観の境内に瑶琴洞なる洞窟あり。清冽掬すべき泉湧出して細流となり、洗薬池に入り、更に竜口より天水壷へと涓々として渓間を流る。蓋し響水観の名或は之に因めるか。境内静閑にして樹木皆風韻を帯び婉も仙境の趣きあり。｜洞の傍に遊僊床なる石床二個あり、道士此の床に来りて静に冥想に耽り、俗を離れて仙遊するといふ。｜（印画の複製を禁ず）
  • 半拉山 半拉山は金福鉄道沿線牛角簡易駅の東北にある山で山が半ばたち割つたやうな形をしてゐる。これに就いて面白い伝説がある。｜「昔此の山に蜘蛛、蚰蜒の類がゐて、長い間天地の霊気と日月の精華を受けて生長し、何時しか妖怪となり山から里へ出ては人々を色々と悩ましました。そこで村の人々は相談し、神仙曹公の所に赴いて、妖怪退治を懇願しました天曹公は村人を哀れに思ひその願ひを聞き入れて直ちに。帝に申し上げました、天帝は早速く天兵に命じ竜兵と協力して、仇をなす蜘蛛等の妖怪を討たしめることになりました、愈々天兵と竜兵は妖怪と戦ひを交へると、天地は晦冥、風雲変色、雷光雷鳴、叫喚の声が三日三晩も続きました。三日あくれば天地は再び静寂に帰しました。村人は漸く恐る恐る戸外に出てみると、巍然として聳えてゐた山が半ば裂かれ蔓延つてゐた蜘蛛の類の姿が見えなくなり、再び平和な村となりました。村の人達は山が半ば裂け崩れたのは竜兵が妖怪の棲家を破壊するためにしたのであらうと思ひました。その後誰云ふとなく、此の山を半拉山と呼ぶやうになりました。」と語り伝へられてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
    半拉山

    半拉山は金福鉄道沿線牛角簡易駅の東北にある山で山が半ばたち割つたやうな形をしてゐる。これに就いて面白い伝説がある。｜「昔此の山に蜘蛛、蚰蜒の類がゐて、長い間天地の霊気と日月の精華を受けて生長し、何時しか妖怪となり山から里へ出ては人々を色々と悩ましました。そこで村の人々は相談し、神仙曹公の所に赴いて、妖怪退治を懇願しました天曹公は村人を哀れに思ひその願ひを聞き入れて直ちに。帝に申し上げました、天帝は早速く天兵に命じ竜兵と協力して、仇をなす蜘蛛等の妖怪を討たしめることになりました、愈々天兵と竜兵は妖怪と戦ひを交へると、天地は晦冥、風雲変色、雷光雷鳴、叫喚の声が三日三晩も続きました。三日あくれば天地は再び静寂に帰しました。村人は漸く恐る恐る戸外に出てみると、巍然として聳えてゐた山が半ば裂かれ蔓延つてゐた蜘蛛の類の姿が見えなくなり、再び平和な村となりました。村の人達は山が半ば裂け崩れたのは竜兵が妖怪の棲家を破壊するためにしたのであらうと思ひました。その後誰云ふとなく、此の山を半拉山と呼ぶやうになりました。」と語り伝へられてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 廣寧寺 広寧寺は広寧寺駅の近くにある金福鉄道沿線有数の名刹である。｜創建年代は明代と伝ふるも明かではない。本殿に釈迦を祀る。外に弥勒仏や山中より掘り出せると云ふ石仏を祀る堂がある。｜毎年旧四月廿三日には盛大なる廟会があり、遠近より集ひよる村人達で甚だ賑やかである。｜（印画の複製を禁ず）
    廣寧寺

    広寧寺は広寧寺駅の近くにある金福鉄道沿線有数の名刹である。｜創建年代は明代と伝ふるも明かではない。本殿に釈迦を祀る。外に弥勒仏や山中より掘り出せると云ふ石仏を祀る堂がある。｜毎年旧四月廿三日には盛大なる廟会があり、遠近より集ひよる村人達で甚だ賑やかである。｜（印画の複製を禁ず）
  • 小石棚 石棚は所謂ドルメンで、ドルメンaormen［dormen］とはケルト語でdorは机、menは石の義を有し、従つてドルメンとは石机の意となる。普通ドルメンの構造は数個の支へ石の上に一枚の天井石を載せたで、地上に露出してゐる。ドルメン築造の目もの的は死者は埋葬する墳墓として造られたものと云ふ説と、社或は祠として築かれたものである等と云ふ説もある。｜扨て小石棚の所在地は亮甲店駅の北東約一里半望海屯の展望のよき丘陵上にあり、稍々旧時の形態を保つてゐる。天井石の長さは約四・三米、幅三米、厚さ〇・五米位あり、石壁の高さは一・五米。幅二・五米乃至二・九米、厚さ〇・二五米位のものである。築造年代は此の附近から石器や土器の断片を出す処から考へて新石器時代のものと云ふことが出来る。｜（印画の複製を禁ず）
    小石棚

    石棚は所謂ドルメンで、ドルメンaormen［dormen］とはケルト語でdorは机、menは石の義を有し、従つてドルメンとは石机の意となる。普通ドルメンの構造は数個の支へ石の上に一枚の天井石を載せたで、地上に露出してゐる。ドルメン築造の目もの的は死者は埋葬する墳墓として造られたものと云ふ説と、社或は祠として築かれたものである等と云ふ説もある。｜扨て小石棚の所在地は亮甲店駅の北東約一里半望海屯の展望のよき丘陵上にあり、稍々旧時の形態を保つてゐる。天井石の長さは約四・三米、幅三米、厚さ〇・五米位あり、石壁の高さは一・五米。幅二・五米乃至二・九米、厚さ〇・二五米位のものである。築造年代は此の附近から石器や土器の断片を出す処から考へて新石器時代のものと云ふことが出来る。｜（印画の複製を禁ず）
  • 大石棚 大石棚は小石棚の南東、碧雲寺の近くの畑の中に在り甚だしく破壊されて大きさは明かではないが、残存の石壁の高さは約二米、幅約二米、石の厚さは約三十糎あり小石棚と同時代のもので、共に石質は片磨岩である。｜欧洲ではドルメンを巨人の墓場とか、フン民族の寝床とか伝へられてゐるが、是れ等の石棚は家屋と云はれて次の如き伝説がある。「昔唐の太宗に従つて高勾麗［高句麗］征伐に来た薛仁貴が、此の丘上にさしかゝつた時、突然大雨が沛然として降り出して来たので、大変困り、小黒山へ走つて行き、大石を持つて来て急造の石小屋を造り大雨を避けたものが、現存の大小石棚だ」と伝へ、又昔高勾麗［高句麗］人が丘上で牧畜をして居た時、小黒山より石を持つて来て、石小屋を造り見張りをして居た処である」と、或は「天井石には薛仁貴の大きな足跡がある」等とも語り伝へられてゐる。｜尚此の地方の土民は石棚を神聖なものとし、此の石棚を破壊すると祟りがあると云ひ、昔一石工がこれを破壊せんとして病死したと伝へられてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
    大石棚

    大石棚は小石棚の南東、碧雲寺の近くの畑の中に在り甚だしく破壊されて大きさは明かではないが、残存の石壁の高さは約二米、幅約二米、石の厚さは約三十糎あり小石棚と同時代のもので、共に石質は片磨岩である。｜欧洲ではドルメンを巨人の墓場とか、フン民族の寝床とか伝へられてゐるが、是れ等の石棚は家屋と云はれて次の如き伝説がある。「昔唐の太宗に従つて高勾麗［高句麗］征伐に来た薛仁貴が、此の丘上にさしかゝつた時、突然大雨が沛然として降り出して来たので、大変困り、小黒山へ走つて行き、大石を持つて来て急造の石小屋を造り大雨を避けたものが、現存の大小石棚だ」と伝へ、又昔高勾麗［高句麗］人が丘上で牧畜をして居た時、小黒山より石を持つて来て、石小屋を造り見張りをして居た処である」と、或は「天井石には薛仁貴の大きな足跡がある」等とも語り伝へられてゐる。｜尚此の地方の土民は石棚を神聖なものとし、此の石棚を破壊すると祟りがあると云ひ、昔一石工がこれを破壊せんとして病死したと伝へられてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 望海堝城 望海堝城は亮甲店駅の東北一里臥竜屯の王家屯の東北、姜家堡子の柳樹園屯との境の山上に在り｜同城は倭寇に対する防備上急造せる小石城であつた為め、今や殆と崩れて、是が城址なりやを疑はしめる程であるが、形状は遼東志の金州衛山川地理図にあるが如き徳利状である。｜倭寇の大軍が永楽十七年六月十四日？朝鮮半島沿岸を伝ひ長山列島に出て、尾角の城児山城の敵を掃討し一泊し、翌十五日舳艪を連ねて登沙河口を上り上陸し、本望海堝城を襲ふたが、防備の明軍の将劉江は兼ねてこの事あるを知り、防備を厳にし伏兵を以つて、倭兵の退路を絶ち、遂に桜桃園の空堡中にて撃滅せしめた。此の戦ひにて劉江は生擒数百斬首千余級、車五輌で首を運び、五十輌で俘虜を送つたと伝へ、劉江は広寧伯に封ぜられた。此の戦ひ後再び倭寇が遼東を侵さぬやうになつたと云ふ。尚本城は石器時代の遺蹟でもある。｜（印画の複製を禁ず）
    望海堝城

    望海堝城は亮甲店駅の東北一里臥竜屯の王家屯の東北、姜家堡子の柳樹園屯との境の山上に在り｜同城は倭寇に対する防備上急造せる小石城であつた為め、今や殆と崩れて、是が城址なりやを疑はしめる程であるが、形状は遼東志の金州衛山川地理図にあるが如き徳利状である。｜倭寇の大軍が永楽十七年六月十四日？朝鮮半島沿岸を伝ひ長山列島に出て、尾角の城児山城の敵を掃討し一泊し、翌十五日舳艪を連ねて登沙河口を上り上陸し、本望海堝城を襲ふたが、防備の明軍の将劉江は兼ねてこの事あるを知り、防備を厳にし伏兵を以つて、倭兵の退路を絶ち、遂に桜桃園の空堡中にて撃滅せしめた。此の戦ひにて劉江は生擒数百斬首千余級、車五輌で首を運び、五十輌で俘虜を送つたと伝へ、劉江は広寧伯に封ぜられた。此の戦ひ後再び倭寇が遼東を侵さぬやうになつたと云ふ。尚本城は石器時代の遺蹟でもある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 金頂山眞武廟 金頂山真武廟は望海堝城の西方金頂山上に在り真武大帝を祀る。劉江が望海堝戦で倭寇を撃滅せしめた記念に創建した廟で昔は得勝廟と云ふた。｜真武大帝は又玄天上帝、北拉佑聖真君とも云はれ、続文献通考に「真武は浮楽国王の太子で、生れて神霊、微を察し遠きを知り、長じて勇猛、修業に務め、志の邪鬼を除き、紫虚元君　遇ひ道秘を授り、遂に東海を越え遊覧し、又天神に遇ひ宝剣を授り、武当山に入り修煉し、居ること四十二年功成り白日飛昇し、上帝の命を奉じ、北方に往き鎮め、被髪跣足、離坎（水火）の真精を躡し、皀纛玄旗を建て、玄武（北方の星名）の神位を統摂し、神威赫然歴代顕著である。本玄武と号したが宋の真宗の諱玄休を避け改めて真武と云ふ」とある要するに真武神は玄武即ち北方の七宿斗、牛、女虚、危、室、壁を祀つてもので星の神格化したものである。｜（印画の複製を禁ず）
    金頂山眞武廟

    金頂山真武廟は望海堝城の西方金頂山上に在り真武大帝を祀る。劉江が望海堝戦で倭寇を撃滅せしめた記念に創建した廟で昔は得勝廟と云ふた。｜真武大帝は又玄天上帝、北拉佑聖真君とも云はれ、続文献通考に「真武は浮楽国王の太子で、生れて神霊、微を察し遠きを知り、長じて勇猛、修業に務め、志の邪鬼を除き、紫虚元君　遇ひ道秘を授り、遂に東海を越え遊覧し、又天神に遇ひ宝剣を授り、武当山に入り修煉し、居ること四十二年功成り白日飛昇し、上帝の命を奉じ、北方に往き鎮め、被髪跣足、離坎（水火）の真精を躡し、皀纛玄旗を建て、玄武（北方の星名）の神位を統摂し、神威赫然歴代顕著である。本玄武と号したが宋の真宗の諱玄休を避け改めて真武と云ふ」とある要するに真武神は玄武即ち北方の七宿斗、牛、女虚、危、室、壁を祀つてもので星の神格化したものである。｜（印画の複製を禁ず）
  • 眞武神の石像 真武神の石像は金頂山真武廟の本殿の東側の小堂の中に安置され、表面は奇麗に彩色されてゐる宝剣を握り、被髪跣足の像で、某氏の説によれば倭寇を全滅せしめた都督劉江の像を擬して制作したものではあるまいかと云ふ。即ち此の石像は全遼志官業の条に劉江の容貌を云へる「姿貌豊偉知識過人」とあるにあたると。｜（印画の複製を禁ず）
    眞武神の石像

    真武神の石像は金頂山真武廟の本殿の東側の小堂の中に安置され、表面は奇麗に彩色されてゐる宝剣を握り、被髪跣足の像で、某氏の説によれば倭寇を全滅せしめた都督劉江の像を擬して制作したものではあるまいかと云ふ。即ち此の石像は全遼志官業の条に劉江の容貌を云へる「姿貌豊偉知識過人」とあるにあたると。｜（印画の複製を禁ず）
  • 玄武の石像 玄武の石像は関東州内では珍しく、金頂山真武廟の東隣の真武の石像の前に安置されてゐる。｜玄武神が表象化されたものが本写真の如き亀に蛇が纏つた形となる。その由来は酉陽雑俎に「朱道士者。太和八年常遊。廬山。憩於澗石。忽見蟠蛇。如堆絵錦。俄変為巨亀。訪之山叟云。是玄武也。故玄武是二物昭然矣。且北属水。楊氏所謂壬為陽水。以騰蛇之雄。配癸為陰水。以烏亀之雌配。雌雄相交曰玄武」と。｜（印画の複製を禁ず）
    玄武の石像

    玄武の石像は関東州内では珍しく、金頂山真武廟の東隣の真武の石像の前に安置されてゐる。｜玄武神が表象化されたものが本写真の如き亀に蛇が纏つた形となる。その由来は酉陽雑俎に「朱道士者。太和八年常遊。廬山。憩於澗石。忽見蟠蛇。如堆絵錦。俄変為巨亀。訪之山叟云。是玄武也。故玄武是二物昭然矣。且北属水。楊氏所謂壬為陽水。以騰蛇之雄。配癸為陰水。以烏亀之雌配。雌雄相交曰玄武」と。｜（印画の複製を禁ず）
  • 眞武廟内の倭寇碑 金頂山真武廟内には古碑数基あり、中に明の正徳六年及び万暦十七年の碑の倭寇討滅の記がある前者は殆と磨滅してゐるが後者は稍々判読することが出来る。倭寇に関する点を記すれば次の如くである。｜「重修真武行祠以崇得勝碑記嘗聞。玄天上帝。尊神垂今。精気変々。霊光灼々。降妖駆邪。輔国安邦。我朝宗祀。封鎮於此。方寇塵遠遯。遐辺塞清平。皇国鞏固。帝道遐昌。安壌祐祐。悉紀何遑。永栄時。倭寇駕船捌百艘。擄掠沿海。居民乗航。奔望海堝焉。都督劉江。守禦榆林。遂統兵攻撃。鋒利難敵。陣勢蛇形。人望而畏。劉都公画謀。都指揮徐公剛輩。伝令官軍。披頭仗剣。儼若真武神状。鼓而攻。群倭奔敗。喪胆尽勦無遺。船艘焚滅。厥攻偉哉。憶此奇功。若或使之。当時○○紀称得勝。而立此真武像。故云得勝廟矣。｜（印画の複製を禁ず）
    眞武廟内の倭寇碑

    金頂山真武廟内には古碑数基あり、中に明の正徳六年及び万暦十七年の碑の倭寇討滅の記がある前者は殆と磨滅してゐるが後者は稍々判読することが出来る。倭寇に関する点を記すれば次の如くである。｜「重修真武行祠以崇得勝碑記嘗聞。玄天上帝。尊神垂今。精気変々。霊光灼々。降妖駆邪。輔国安邦。我朝宗祀。封鎮於此。方寇塵遠遯。遐辺塞清平。皇国鞏固。帝道遐昌。安壌祐祐。悉紀何遑。永栄時。倭寇駕船捌百艘。擄掠沿海。居民乗航。奔望海堝焉。都督劉江。守禦榆林。遂統兵攻撃。鋒利難敵。陣勢蛇形。人望而畏。劉都公画謀。都指揮徐公剛輩。伝令官軍。披頭仗剣。儼若真武神状。鼓而攻。群倭奔敗。喪胆尽勦無遺。船艘焚滅。厥攻偉哉。憶此奇功。若或使之。当時○○紀称得勝。而立此真武像。故云得勝廟矣。｜（印画の複製を禁ず）
  • 喇嘛塔の傳說 泉水屯簡易駅の近く、土人の称する喇嘛塔なるものがある。これに就いて左の如き伝説が語られてゐる。｜昔泉水屯の村に阿房々々と村人から常に馬鹿にされ、物笑ひの種になつてゐた子供があつた。併し其の子供は世の常の阿房と違つてゐるところがあつた。彼は長じて二十歳ばかりになつたが、或る日神の天啓を受け、道で一部の経典を拾つた。其の経典には全く不思議な見なれない文字で満されてあつたが、阿房とまで馬鹿にされた彼だけが自由に読み得て、其後彼には不思議な霊題を有するようになり、彼の祈りに会ふものは、非常な難病でも忽ちなほつた。今まで軽蔑した村の人々もやがて彼を神仏として尊敬した。彼は一生独身で村の人々の為め祈り、高齢で経典を読みつゝ眠るやうに息を引き取つた。村の人々は彼の為めに塔を造つて祀つた」。此の話は今から約二百年ばかり前の事で、彼の拾つたと云ふ経典も。彼の死後火事にあつて焼けてしまつてなくなつたと云ふ。蓋し此の不思議な見なれない文字で書いたと云ふ経典は西蔵文字か何かで書いたのであらう。普通此の地方で喇嘛塔と称する塔は僧侶を葬つた処に立てた塔であるから、此の塔もそれではあるまいか。｜（印画の複製を禁ず）
    喇嘛塔の傳說

    泉水屯簡易駅の近く、土人の称する喇嘛塔なるものがある。これに就いて左の如き伝説が語られてゐる。｜昔泉水屯の村に阿房々々と村人から常に馬鹿にされ、物笑ひの種になつてゐた子供があつた。併し其の子供は世の常の阿房と違つてゐるところがあつた。彼は長じて二十歳ばかりになつたが、或る日神の天啓を受け、道で一部の経典を拾つた。其の経典には全く不思議な見なれない文字で満されてあつたが、阿房とまで馬鹿にされた彼だけが自由に読み得て、其後彼には不思議な霊題を有するようになり、彼の祈りに会ふものは、非常な難病でも忽ちなほつた。今まで軽蔑した村の人々もやがて彼を神仏として尊敬した。彼は一生独身で村の人々の為め祈り、高齢で経典を読みつゝ眠るやうに息を引き取つた。村の人々は彼の為めに塔を造つて祀つた」。此の話は今から約二百年ばかり前の事で、彼の拾つたと云ふ経典も。彼の死後火事にあつて焼けてしまつてなくなつたと云ふ。蓋し此の不思議な見なれない文字で書いたと云ふ経典は西蔵文字か何かで書いたのであらう。普通此の地方で喇嘛塔と称する塔は僧侶を葬つた処に立てた塔であるから、此の塔もそれではあるまいか。｜（印画の複製を禁ず）
  • 駱駝石の傳說 駱駝石は杏樹屯駅の西南、約二十数町の海岸に在り。長さ約六十四米、最高約十二米の巨岩で土民は昔は其の状が駱駝に似て、其の頭が山東の方に向いてゐたと云ひ次の如き伝説が語られてゐる。昔山東地方の農作物が年々荒され大変農民が困り、遂に神に伺ひを立てると、海を越え関東州杏樹屯の海岸にある駱駝石が、夜毎に神通力で山東に来て、農作物を食ひ荒すため山東は疲弊し、其の反対に駱駝の糞で、関東州が肥えて行くのであるから、駱駝石を打ち砕けば其の害がなくなとるの託宣があつたので、山東の農民は高徳の道士に願ひ、はる（ばる）渤海の海を渡り、密に杏樹屯へ赴き、駱駝石の頭を錫杖で打ち砕かせた。それで現存の駱駝石には頭がなくなつたと云ふ
    駱駝石の傳說

    駱駝石は杏樹屯駅の西南、約二十数町の海岸に在り。長さ約六十四米、最高約十二米の巨岩で土民は昔は其の状が駱駝に似て、其の頭が山東の方に向いてゐたと云ひ次の如き伝説が語られてゐる。昔山東地方の農作物が年々荒され大変農民が困り、遂に神に伺ひを立てると、海を越え関東州杏樹屯の海岸にある駱駝石が、夜毎に神通力で山東に来て、農作物を食ひ荒すため山東は疲弊し、其の反対に駱駝の糞で、関東州が肥えて行くのであるから、駱駝石を打ち砕けば其の害がなくなとるの託宣があつたので、山東の農民は高徳の道士に願ひ、はる（ばる）渤海の海を渡り、密に杏樹屯へ赴き、駱駝石の頭を錫杖で打ち砕かせた。それで現存の駱駝石には頭がなくなつたと云ふ
  • 伏見宮殿下御上陸記念碑 本碑は金福鉄道簡易駅宮之宿に在り、征露第二軍の第一師団長陸軍中将伏見宮貞愛親王殿下が金枝玉葉の御身を以て、明治三十七年五月八日此の地の南方海岸、沙嶺子港小河口に激浪の間を御徒渉御上陸遊ばされたことを、永遠に記念する為めに、御上陸最初の御宿泊の地に昭和八年碑を建て、伏見宮殿下御上陸記念碑と題す。書は武藤元師である。｜（印画の複製を禁ず）
    伏見宮殿下御上陸記念碑

    本碑は金福鉄道簡易駅宮之宿に在り、征露第二軍の第一師団長陸軍中将伏見宮貞愛親王殿下が金枝玉葉の御身を以て、明治三十七年五月八日此の地の南方海岸、沙嶺子港小河口に激浪の間を御徒渉御上陸遊ばされたことを、永遠に記念する為めに、御上陸最初の御宿泊の地に昭和八年碑を建て、伏見宮殿下御上陸記念碑と題す。書は武藤元師である。｜（印画の複製を禁ず）
  • 伏見宮殿下御宿泊所 伏見宮殿下が関東州御上陸最初の御宿泊所は林家屯会林家屯一一六番孫恒発の家で、現存の家は其の後修繕したものであるが、大きさは寸分変ることなく、家の入口を入ると両側に大きな竃があり、右の隣室は殿下の御宿泊なされた処で、約二坪あり、南側に窓が一つ、炕の広さは縦五、九四尺横八、二五尺の狭隘なる陋屋である。伏見宮殿下の御日記（津田少将謹述）五月八日の一節に「此の家屋は本と此地の最新最美なるを以て称せられ設営員は朝来数時間の清掃に従事せしも、積年の堆塵満面に硬着し、容易に除去し得べからず一種の臭気紛々鼻を撲ち、屋壁は半ば破壊し、室内は煤煙の為全く黯黒色に変じ、平床には一張の決裂せる編簀あるのみ其の土間は不潔なる長櫃、戸棚、巨瓶、大桶の類も乱積し容易く動すべからず、従つて室内極めて狭隘に進退出入凡て自由ならず　窓前に豚舎ありて豚之に棲息し、塵溜ありて汚物之に蔵し、傍ら数尺を隔て厠圊あり、露天にて僅に横木を架し、臭気勝ふべからず。・・・陋屋、殿下を容れ奉るに足らず、願くは別に一寸乾浄の地を撰び幕舎を設け、以て殿下を奉迎せんと。殿下宣はく陣中は寧る不自由を以て常とす。是れ亦人の居住する所なり。豈我身を置く能はざらんや。余は唯家人を憫然に思ふのみ。彼等今挙家十余人にて狭隘なる一室を使用しつゝあるに非ずや。爾等其れ厚く慰藉せよと。余は感激命を奉じて退き終に是を以て御座所と定めたり・・・」｜尚写真の老婆は七十一歳に当時の事をよく話してくれる。
    伏見宮殿下御宿泊所

    伏見宮殿下が関東州御上陸最初の御宿泊所は林家屯会林家屯一一六番孫恒発の家で、現存の家は其の後修繕したものであるが、大きさは寸分変ることなく、家の入口を入ると両側に大きな竃があり、右の隣室は殿下の御宿泊なされた処で、約二坪あり、南側に窓が一つ、炕の広さは縦五、九四尺横八、二五尺の狭隘なる陋屋である。伏見宮殿下の御日記（津田少将謹述）五月八日の一節に「此の家屋は本と此地の最新最美なるを以て称せられ設営員は朝来数時間の清掃に従事せしも、積年の堆塵満面に硬着し、容易に除去し得べからず一種の臭気紛々鼻を撲ち、屋壁は半ば破壊し、室内は煤煙の為全く黯黒色に変じ、平床には一張の決裂せる編簀あるのみ其の土間は不潔なる長櫃、戸棚、巨瓶、大桶の類も乱積し容易く動すべからず、従つて室内極めて狭隘に進退出入凡て自由ならず　窓前に豚舎ありて豚之に棲息し、塵溜ありて汚物之に蔵し、傍ら数尺を隔て厠圊あり、露天にて僅に横木を架し、臭気勝ふべからず。・・・陋屋、殿下を容れ奉るに足らず、願くは別に一寸乾浄の地を撰び幕舎を設け、以て殿下を奉迎せんと。殿下宣はく陣中は寧る不自由を以て常とす。是れ亦人の居住する所なり。豈我身を置く能はざらんや。余は唯家人を憫然に思ふのみ。彼等今挙家十余人にて狭隘なる一室を使用しつゝあるに非ずや。爾等其れ厚く慰藉せよと。余は感激命を奉じて退き終に是を以て御座所と定めたり・・・」｜尚写真の老婆は七十一歳に当時の事をよく話してくれる。
  • 端午節風俗 本写真は金福沿線杏樹屯駅の南、征露第二軍の上陸地の一である小河口の部落で撮影したものである。満洲では旧五月五日端午節の時、民家では各々門口に桃の枝に布製の猴子を懸す風がある。猴子は邪を払ふ力があるものとされ、又猴子の両手にさげた小箒は病気を掃除すると云ふ寓意を持つものである。｜（印画の複製を禁ず）
    端午節風俗

    本写真は金福沿線杏樹屯駅の南、征露第二軍の上陸地の一である小河口の部落で撮影したものである。満洲では旧五月五日端午節の時、民家では各々門口に桃の枝に布製の猴子を懸す風がある。猴子は邪を払ふ力があるものとされ、又猴子の両手にさげた小箒は病気を掃除すると云ふ寓意を持つものである。｜（印画の複製を禁ず）
  • 貔子窩紅嘴堡城 本城は貔子窩宋家屯会西城子屯にあり、西城子、紅水城、紅土城子等とも称せらる。南北一五四米、東西一三一米。南に甕城を造り一門がある。盛京通志巻二十九に「紅嘴堡。城（金州）東北一百二十里。周囲二里。一百八十歩。門一。我太祖（清）高皇帝。辛酉年。征明撫降之。今設汎焉とあれば、既に明代此の地城にを築造せしこと明かである。尚城内から鎮海関なる石額が発見されてあるが、蓋し城門にかゝげたものであらう。｜（印画の複製を禁ず）
    貔子窩紅嘴堡城

    本城は貔子窩宋家屯会西城子屯にあり、西城子、紅水城、紅土城子等とも称せらる。南北一五四米、東西一三一米。南に甕城を造り一門がある。盛京通志巻二十九に「紅嘴堡。城（金州）東北一百二十里。周囲二里。一百八十歩。門一。我太祖（清）高皇帝。辛酉年。征明撫降之。今設汎焉とあれば、既に明代此の地城にを築造せしこと明かである。尚城内から鎮海関なる石額が発見されてあるが、蓋し城門にかゝげたものであらう。｜（印画の複製を禁ず）
  • 西城子屯の古墳 宋家屯会西城子屯の南数町の畠の中に在り。本年七月降雨の為め、畑の地が陥没した結果、発見せられたもので、縦二、八一米、横一、五五米、深さ一、六米の甎墓で、上部は長さ二、一七米、幅〇、四八米、厚さ〇、一六米の片磨岩六枚で覆はれてあつた。南側に入口があり、玄室には二個の打ちたる棺が存残してあつたが、蓋し夫妻のものであらう。盗掘された事があるらしく、何等の副葬品を発見することが出来なかつたが、墳墓の築造方法及び有紋甎の紋様は頗る特殊のもので今後の研究に待つものてある。従つて築造年代は不明ではあるが、此の古墳の西方数町の処に多数の明代の墓碑の存する処より推定して明代を降らぬものと思はれる。（印画の複製を禁ず）
    西城子屯の古墳

    宋家屯会西城子屯の南数町の畠の中に在り。本年七月降雨の為め、畑の地が陥没した結果、発見せられたもので、縦二、八一米、横一、五五米、深さ一、六米の甎墓で、上部は長さ二、一七米、幅〇、四八米、厚さ〇、一六米の片磨岩六枚で覆はれてあつた。南側に入口があり、玄室には二個の打ちたる棺が存残してあつたが、蓋し夫妻のものであらう。盗掘された事があるらしく、何等の副葬品を発見することが出来なかつたが、墳墓の築造方法及び有紋甎の紋様は頗る特殊のもので今後の研究に待つものてある。従つて築造年代は不明ではあるが、此の古墳の西方数町の処に多数の明代の墓碑の存する処より推定して明代を降らぬものと思はれる。（印画の複製を禁ず）
  • 盤龍山潮海寺（一） 潮海寺は貔子窩駅北里余、賛子河会に在り。貔子窩管内の有数の名刹である。本殿に釈迦仏を中央として、右に竜王、天后聖母を安置してあり、前に雍正十一年の銘を有する鉄磬がある。又境内の中央に民国八年八月の大鉄香炉がある、｜同寺は道光十四年の碑文中に「海於天地間。為物最鉅。故瀕海者。多以名寺。而潮海寺為最著。」とある如くは或は昔此の近くまで海入り込みし事とも考へられる。｜（印画の複製を禁ず）
    盤龍山潮海寺（一）

    潮海寺は貔子窩駅北里余、賛子河会に在り。貔子窩管内の有数の名刹である。本殿に釈迦仏を中央として、右に竜王、天后聖母を安置してあり、前に雍正十一年の銘を有する鉄磬がある。又境内の中央に民国八年八月の大鉄香炉がある、｜同寺は道光十四年の碑文中に「海於天地間。為物最鉅。故瀕海者。多以名寺。而潮海寺為最著。」とある如くは或は昔此の近くまで海入り込みし事とも考へられる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 潮海寺（二） 潮海寺の門外の西側の松林中に、九聖祠、鏡楼、古碑等がある。九聖祠には雍正十三年の鉄磬があり、廟前に半ば埋れたる古碑は磨滅して全く判読することが出来ない。併し年号を書く処に大明らしく見ゆる字がある。果して然るか。此の地松風を聞き清遊に適してゐる。｜（印画の複製を禁ず）
    潮海寺（二）

    潮海寺の門外の西側の松林中に、九聖祠、鏡楼、古碑等がある。九聖祠には雍正十三年の鉄磬があり、廟前に半ば埋れたる古碑は磨滅して全く判読することが出来ない。併し年号を書く処に大明らしく見ゆる字がある。果して然るか。此の地松風を聞き清遊に適してゐる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 石佛寺 （石仏寺） 石仏寺は賛子河会に在り、本殿に釈迦及石仏東殿に薬王、西殿に天后を祀る。石仏寺の名は嘉慶年間重修の際、山崖より石仏を得て之を祀る故なりと云ふ。石仏寺天后宮碑に此の記あり。「石仏寺金邑盤竜山朝海寺之下建於有明。前清嘉慶時重修。斯廟興工之日得石仏於山崖。因以名焉。即金仏所供之石像是也。」境内に嘉慶年間等の古碑がある。｜（印画の複製を禁ず）
    石佛寺 （石仏寺）

    石仏寺は賛子河会に在り、本殿に釈迦及石仏東殿に薬王、西殿に天后を祀る。石仏寺の名は嘉慶年間重修の際、山崖より石仏を得て之を祀る故なりと云ふ。石仏寺天后宮碑に此の記あり。「石仏寺金邑盤竜山朝海寺之下建於有明。前清嘉慶時重修。斯廟興工之日得石仏於山崖。因以名焉。即金仏所供之石像是也。」境内に嘉慶年間等の古碑がある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 永安臺 貔子窩駅の北方二里、賛子河会新台子屯に在り。永安台は南北二十八米、東西二十六米の石築の外郭の中に、片麻岩を礎石とし、長さ四十糎、幅十八糎、厚さ十糎の煉瓦を以て円筒形に積み上げたもので、其の高さ約十二米、基部の直径十米あり。土民は唐代高句麗の軍を防ぐために造りし望見所とか、唐代戦傷兵を収容所とか、色々伝ふるも、皆俗説で、本台は烽火台か路台の要をなしたものであらう。此の建設年代は不明であるが、元石額があり、永安台並に万暦の年号を刻せるものありしと云へば、明代の築造なることは疑ひがない。（印画の複製を禁ず）
    永安臺

    貔子窩駅の北方二里、賛子河会新台子屯に在り。永安台は南北二十八米、東西二十六米の石築の外郭の中に、片麻岩を礎石とし、長さ四十糎、幅十八糎、厚さ十糎の煉瓦を以て円筒形に積み上げたもので、其の高さ約十二米、基部の直径十米あり。土民は唐代高句麗の軍を防ぐために造りし望見所とか、唐代戦傷兵を収容所とか、色々伝ふるも、皆俗説で、本台は烽火台か路台の要をなしたものであらう。此の建設年代は不明であるが、元石額があり、永安台並に万暦の年号を刻せるものありしと云へば、明代の築造なることは疑ひがない。（印画の複製を禁ず）
  • 貔子窩の洞窟 貔子窩は貔子窩港の西端、竜頭山に在る洞窟である。昔此の洞窟に貔子と称する猛獣が棲息せりと伝へ、貔子窩の地名これに因ると云ふ。｜洞窟内には今正一位荷稲豊姫大明神及び胡仙、黄大仙等の日満の神々が合祀されて、日満共存共栄、日満合体を具現してゐる。｜神の霊顕が頗るあらたかで、遠近の信者が多く、有求必応、神保無疆、知恩報徳等の額が所狭いまでかゝげられ、又鳥居も可なり多く建てられてゐる。｜此の洞窟の風景は特に満潮の時がよく小波が廟下を打ち戎克白帆をあげ往来する景が誠によく。貔子窩港の名勝の隋一であらう。
    貔子窩の洞窟

    貔子窩は貔子窩港の西端、竜頭山に在る洞窟である。昔此の洞窟に貔子と称する猛獣が棲息せりと伝へ、貔子窩の地名これに因ると云ふ。｜洞窟内には今正一位荷稲豊姫大明神及び胡仙、黄大仙等の日満の神々が合祀されて、日満共存共栄、日満合体を具現してゐる。｜神の霊顕が頗るあらたかで、遠近の信者が多く、有求必応、神保無疆、知恩報徳等の額が所狭いまでかゝげられ、又鳥居も可なり多く建てられてゐる。｜此の洞窟の風景は特に満潮の時がよく小波が廟下を打ち戎克白帆をあげ往来する景が誠によく。貔子窩港の名勝の隋一であらう。
  • 貔子窩財神廟 貔子窩の財神廟は民政署の前に在り、財神を祀る　蓋し貔子窩は往時より沿岸戎克貿易港として栄えて来た処であれば、特に司財の神を祀り、貿易の盛んになることを祈つたものであらう。｜財神は回族とも称せられ豚を食はず、祭には焼酒牛肉を供へる風がある。｜境内に咸豊十一年、同治四年及十年、道光二年、光緒十五年等の碑があり、中に貔子窩の町の歴吏を語る資料となるものもある。｜又本廟は露冶時代に一時撫民府が設けられた所と云ふ。（印画の複製を禁ず）
    貔子窩財神廟

    貔子窩の財神廟は民政署の前に在り、財神を祀る　蓋し貔子窩は往時より沿岸戎克貿易港として栄えて来た処であれば、特に司財の神を祀り、貿易の盛んになることを祈つたものであらう。｜財神は回族とも称せられ豚を食はず、祭には焼酒牛肉を供へる風がある。｜境内に咸豊十一年、同治四年及十年、道光二年、光緒十五年等の碑があり、中に貔子窩の町の歴吏を語る資料となるものもある。｜又本廟は露冶時代に一時撫民府が設けられた所と云ふ。（印画の複製を禁ず）
  • 三淸廟墻壁の石額 城子疃駅の北方数町の処に三清廟と云ふ廟があるが。其の墻壁に石額がはめられてゐる。其の石額には帰服堡と刻まれてある。其の大きさは長さ約八十五糎、幅約五十糎で、片磨岩製である。此の石額は元、其の隣接する城堡内にありしものと云へば、蓋し城門にはめられあつたものであらう、貔子窩西城子出土鎮海関の石額と同石質で石刻の字が多分に類似してゐる処から考へるに両者同時代のものであらう。併し其の年代は両者とも石額には年代が刻まれてないから不明ではあるが、明代を降らぬものと思はれる。（印画の複製を禁ず）
    三淸廟墻壁の石額

    城子疃駅の北方数町の処に三清廟と云ふ廟があるが。其の墻壁に石額がはめられてゐる。其の石額には帰服堡と刻まれてある。其の大きさは長さ約八十五糎、幅約五十糎で、片磨岩製である。此の石額は元、其の隣接する城堡内にありしものと云へば、蓋し城門にはめられあつたものであらう、貔子窩西城子出土鎮海関の石額と同石質で石刻の字が多分に類似してゐる処から考へるに両者同時代のものであらう。併し其の年代は両者とも石額には年代が刻まれてないから不明ではあるが、明代を降らぬものと思はれる。（印画の複製を禁ず）
  • 歸服堡 帰服堡は城子疃三清廟に隣接せる土城である。城は低い丘の南麓に築かれ、南北一九五、八米、東西一〇九米残存土壁の高さ幅各約四米ばかりで、昔は一門南に在りしのみであつたが、今は南と東に各々一門がある。併し現存の南の門は昔の門と同一ではなく西にかたより、往時の門は土を以つてふさがれてある。｜此の城堡が何が故に帰服堡と称せらるゝか、其の理由は明かではないが、唐の太宗が高句麗を征伐した時、此の城を攻略して高句麗を帰服せしめた為めであるとか、或は明代倭寇が此の地で戦ひに破れ降服した故とか伝へられてゐるが、共に俗説で遽かに信ずることができない｜併し貔子窩の西城子と同じく明代の築造であらう、｜城の附近北山及び天台山に各々土築の烽火台の跡がある。｜写真は城内の東側で、崩れたる土壁と、帰服堡の石額のある三清廟の堂字が見える
    歸服堡

    帰服堡は城子疃三清廟に隣接せる土城である。城は低い丘の南麓に築かれ、南北一九五、八米、東西一〇九米残存土壁の高さ幅各約四米ばかりで、昔は一門南に在りしのみであつたが、今は南と東に各々一門がある。併し現存の南の門は昔の門と同一ではなく西にかたより、往時の門は土を以つてふさがれてある。｜此の城堡が何が故に帰服堡と称せらるゝか、其の理由は明かではないが、唐の太宗が高句麗を征伐した時、此の城を攻略して高句麗を帰服せしめた為めであるとか、或は明代倭寇が此の地で戦ひに破れ降服した故とか伝へられてゐるが、共に俗説で遽かに信ずることができない｜併し貔子窩の西城子と同じく明代の築造であらう、｜城の附近北山及び天台山に各々土築の烽火台の跡がある。｜写真は城内の東側で、崩れたる土壁と、帰服堡の石額のある三清廟の堂字が見える
  • 歸服堡內の民家 写真は帰服堡城内にある民家であるが、貔子窩地方の村落には此の種の民家が多い。普平房と呼ばれ、屋根は平かで厚く土や漆喰で固められてある。秋口になると此の屋上に高粱の桿であんだ直径及高さ各々一米半位の円筒状のものが、多数並べられて、其の中に刈り取られた玉蜀黍がうづたかく積み重さねられる物置場となる｜（印画の複製を禁ず）
    歸服堡內の民家

    写真は帰服堡城内にある民家であるが、貔子窩地方の村落には此の種の民家が多い。普平房と呼ばれ、屋根は平かで厚く土や漆喰で固められてある。秋口になると此の屋上に高粱の桿であんだ直径及高さ各々一米半位の円筒状のものが、多数並べられて、其の中に刈り取られた玉蜀黍がうづたかく積み重さねられる物置場となる｜（印画の複製を禁ず）
  • 城子瞳（偏は田）の市街 城子疃の市街は城子疃駅の北方、碧流河の一支流に沿ふて在り。市街を形成するに至つたのは大正十年以来のことであり、大正八年此の地方の凶作が、多額の穀類輸入の戎克船の碧流河を利用する気運を助成し、戎克貿易港となり、加ふるに昭和三年九月一日金福鉄道開通し、其の終点とし、水陸交通の機関全く完成し、州境の商業都市として繁栄するに至り、人口も三千余に増加し、年々増加するばかりである。
    城子瞳（偏は田）の市街

    城子疃の市街は城子疃駅の北方、碧流河の一支流に沿ふて在り。市街を形成するに至つたのは大正十年以来のことであり、大正八年此の地方の凶作が、多額の穀類輸入の戎克船の碧流河を利用する気運を助成し、戎克貿易港となり、加ふるに昭和三年九月一日金福鉄道開通し、其の終点とし、水陸交通の機関全く完成し、州境の商業都市として繁栄するに至り、人口も三千余に増加し、年々増加するばかりである。
  • 城子瞳（偏は田）の埠頭 城子疃の埠頭は駅の東北、天台山の麓、復州隅子屯より発する碧流河の一支流に沿ひ、碧流河口を距る数里の処に在り。満潮時には優に三百石積の戎克船を多数容るゝに足る。併し従来此の水運が大連、山東方面等一般的に知られ次第に利用されるに至り、昭和五年戎克繋留場たる小埠頭竣功し、今や州境唯一の戎克貿易港となり、州境内外の物資の集教地となつてゐる。
    城子瞳（偏は田）の埠頭

    城子疃の埠頭は駅の東北、天台山の麓、復州隅子屯より発する碧流河の一支流に沿ひ、碧流河口を距る数里の処に在り。満潮時には優に三百石積の戎克船を多数容るゝに足る。併し従来此の水運が大連、山東方面等一般的に知られ次第に利用されるに至り、昭和五年戎克繋留場たる小埠頭竣功し、今や州境唯一の戎克貿易港となり、州境内外の物資の集教地となつてゐる。
  • 塔子屯の石塔 塔子屯の石塔は城子疃駅の東方約二十町の処に在り｜石塔は地上二、五二米、石質は片麻岩にして、土民の伝ふる処によれば昔突然地中より現はれたもので、塔子なる地名もこれに因ると云ふ、此の形式の塔は州内唯一のもので、其の建立の年代は不明であるが、仏塔の一種ではあるまいか。（印画の複製を禁ず）
    塔子屯の石塔

    塔子屯の石塔は城子疃駅の東方約二十町の処に在り｜石塔は地上二、五二米、石質は片麻岩にして、土民の伝ふる処によれば昔突然地中より現はれたもので、塔子なる地名もこれに因ると云ふ、此の形式の塔は州内唯一のもので、其の建立の年代は不明であるが、仏塔の一種ではあるまいか。（印画の複製を禁ず）
  • 謝家屯の燈籠石 灯篭石は城子疃駅の東約一里半碧流河の下流に在り巨岩が浸蝕にあひ、形状稍々灯篭に似たる故に其の名がある。｜満々たる碧流河の水中に浮び、河岸には緑樹茂り、河を上下する真帆片帆の通ふあり、全く一幅の絵其のものである。｜（印画の複製を禁ず）
    謝家屯の燈籠石

    灯篭石は城子疃駅の東約一里半碧流河の下流に在り巨岩が浸蝕にあひ、形状稍々灯篭に似たる故に其の名がある。｜満々たる碧流河の水中に浮び、河岸には緑樹茂り、河を上下する真帆片帆の通ふあり、全く一幅の絵其のものである。｜（印画の複製を禁ず）
  • 謝家屯の礫層 謝家屯の灯篭石の附近、碧流河の河口に突出する岬の上層部に厚さ二米に近い礫層があるが、これは地質時代にこゝが河床であつたことを立証する貴舌な資料、を供給するものであると共に現在の関東州の地穀が漸次隆起して居ることを証明するものである。｜尚写真の遠くに見うる台地状の岬は大張家村廟後屯の貝塚であり、又その右方に見ゆるのは海湖寺で乾隆年間の古碑がある。｜（印画の複製を禁ず）
    謝家屯の礫層

    謝家屯の灯篭石の附近、碧流河の河口に突出する岬の上層部に厚さ二米に近い礫層があるが、これは地質時代にこゝが河床であつたことを立証する貴舌な資料、を供給するものであると共に現在の関東州の地穀が漸次隆起して居ることを証明するものである。｜尚写真の遠くに見うる台地状の岬は大張家村廟後屯の貝塚であり、又その右方に見ゆるのは海湖寺で乾隆年間の古碑がある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 大成殿の盛儀 写真は金州孔子廟大成殿にて丁祭執行の光景である。｜大成殿の名は宋の徽宗が孔子を祀る殿を大成殿と云へるに始まる。而して大成の名は孟子の「孔子之謂集大成。」の語より出づ。｜孔子の神位の前には籩、簠、簋、豆等の祭器に各々供物があり、又俎の上に牛、羊、豚の太牢が供へられてある。又四配（顔淵、曽子、孟子、子思）従位（十二哲）（閔子騫、冉伯牛、仲弓、宰我、子貢、冉有、季路、子游、子夏、子張、有若、朱子）に供へ物がある。又香盤、爵、燭台等も供へられてある。大成殿の東階下に盥があり手を洗ふに備ふ。殿外前には編鐘、麾、祝、敔、琴、編磬、応鼓、板彭等を備へ、階上の東側に楽生、西側に歌生、東階下には祭官及び舞生の席がある。一般参列者の席は南階前にある。｜丁祭に於ける大成殿の儀式は、陳設、迎神、初献、亜献、終献、飲福、添香、撤饌、送神等の順序で厳粛に行はれる。
    大成殿の盛儀

    写真は金州孔子廟大成殿にて丁祭執行の光景である。｜大成殿の名は宋の徽宗が孔子を祀る殿を大成殿と云へるに始まる。而して大成の名は孟子の「孔子之謂集大成。」の語より出づ。｜孔子の神位の前には籩、簠、簋、豆等の祭器に各々供物があり、又俎の上に牛、羊、豚の太牢が供へられてある。又四配（顔淵、曽子、孟子、子思）従位（十二哲）（閔子騫、冉伯牛、仲弓、宰我、子貢、冉有、季路、子游、子夏、子張、有若、朱子）に供へ物がある。又香盤、爵、燭台等も供へられてある。大成殿の東階下に盥があり手を洗ふに備ふ。殿外前には編鐘、麾、祝、敔、琴、編磬、応鼓、板彭等を備へ、階上の東側に楽生、西側に歌生、東階下には祭官及び舞生の席がある。一般参列者の席は南階前にある。｜丁祭に於ける大成殿の儀式は、陳設、迎神、初献、亜献、終献、飲福、添香、撤饌、送神等の順序で厳粛に行はれる。
  • 文德之舞 金州孔子廟の丁祭に於て、文徳の舞を行ふ舞生は、南金書院生徒中より選ばれた三十二名の者で、各々両手に羽籥［ウヤク］を執り、楽につれて、羽籥を合し、或は離し、又両手を伸縮し、身を屈伸し、或は身体を左右に転じ等して舞ふのであるが、日本等の舞と違ひ、挙動が概して堅く、一種の体操の如き感を与へられる。（襄辨祀規譜巻第四之一、皇朝祭器楽舞録下巻参照）｜此の羽籥を執つて舞ふことは、古くから支那では行はれてゐるもので。礼記文王世子に「凡そ世子を学［オシ］へ及び士を学へるに必ず・・・秋冬は羽籥を学ふ」とあることによつても明かである。
    文德之舞

    金州孔子廟の丁祭に於て、文徳の舞を行ふ舞生は、南金書院生徒中より選ばれた三十二名の者で、各々両手に羽籥［ウヤク］を執り、楽につれて、羽籥を合し、或は離し、又両手を伸縮し、身を屈伸し、或は身体を左右に転じ等して舞ふのであるが、日本等の舞と違ひ、挙動が概して堅く、一種の体操の如き感を与へられる。（襄辨祀規譜巻第四之一、皇朝祭器楽舞録下巻参照）｜此の羽籥を執つて舞ふことは、古くから支那では行はれてゐるもので。礼記文王世子に「凡そ世子を学［オシ］へ及び士を学へるに必ず・・・秋冬は羽籥を学ふ」とあることによつても明かである。
  • 文德の舞生 金州孔子廟の文徳の舞生は三十二名にして各々式帽を戴き式服を着用し、又式靴をはき、右手に翟（羽）を、左手に籥を執り、亜献の礼及び終献の礼に於て舞を行ふ。｜把持する羽は本来は雉尾で、これを短き棒に挿して用ひるのであるが、金州では金紙で雉尾を模して作り其の長さ約二尺八寸で、これを長さ二尺一寸五分の丸棒の柄の先に有る五寸五分の竜頭の口にさしてある。籥は笛であるが、金州では長さ一尺六寸直径約八分の中空の竹管を茶褐色に塗り、雲形の模様をつけたものを用ひてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
    文德の舞生

    金州孔子廟の文徳の舞生は三十二名にして各々式帽を戴き式服を着用し、又式靴をはき、右手に翟（羽）を、左手に籥を執り、亜献の礼及び終献の礼に於て舞を行ふ。｜把持する羽は本来は雉尾で、これを短き棒に挿して用ひるのであるが、金州では金紙で雉尾を模して作り其の長さ約二尺八寸で、これを長さ二尺一寸五分の丸棒の柄の先に有る五寸五分の竜頭の口にさしてある。籥は笛であるが、金州では長さ一尺六寸直径約八分の中空の竹管を茶褐色に塗り、雲形の模様をつけたものを用ひてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 武功之舞 金州孔子廟の丁祭初献の礼に行ふ武功の舞に於ては舞生が干［タテ］を左手に執り、戈［ホコ］を右手に持つて、楽につれて、干戈を合し、或は離し、両手を伸縮し、或は又身を屈伸、左右に身を廻したりして舞ふのであるが、詳細は皇朝祭器楽舞録下巻、襄辨祀規譜巻四之一、文廟武舞譜にあるから省略する。武功の舞も文徳の舞と同じく、支那には古くある舞で、礼記文王世子に「凡そ世子を学［オシ］へ及び士を学べるに必ず、春夏は干戈を学へ」とある。此の干戈を教へとは武功の舞の事を云ふのである。（印画の複製を禁ず）
    武功之舞

    金州孔子廟の丁祭初献の礼に行ふ武功の舞に於ては舞生が干［タテ］を左手に執り、戈［ホコ］を右手に持つて、楽につれて、干戈を合し、或は離し、両手を伸縮し、或は又身を屈伸、左右に身を廻したりして舞ふのであるが、詳細は皇朝祭器楽舞録下巻、襄辨祀規譜巻四之一、文廟武舞譜にあるから省略する。武功の舞も文徳の舞と同じく、支那には古くある舞で、礼記文王世子に「凡そ世子を学［オシ］へ及び士を学べるに必ず、春夏は干戈を学へ」とある。此の干戈を教へとは武功の舞の事を云ふのである。（印画の複製を禁ず）
  • 武功の舞生 金州孔子廟の武功の舞を行ふ舞生は、南金書院の生徒の中から選ばれ、その人数は三十二名である。舞生は式帽式服をつけ式靴をはき、左手に干［タテ］、右手に戈［ホコ］を執り舞ふのである。｜干の長さ約四尺幅上部九寸、下部七寸七部で、先きが三角に尖り、表面の上方一尺四寸ばかりの処には竜頭（本廟のものは虎の如く見える）が画かれ、其の下方には普通五彩の竜花があるのであるが、本廟のものは簡単なる模様あるに過ぎない、又干の裏には執手があり、持つに便利なやうになつてゐる。次に戈の戚頭の長さ六尺五分、寛五寸で、青色に塗られ、柄の長さは、二尺四寸五分ありて赤色で塗られてある。
    武功の舞生

    金州孔子廟の武功の舞を行ふ舞生は、南金書院の生徒の中から選ばれ、その人数は三十二名である。舞生は式帽式服をつけ式靴をはき、左手に干［タテ］、右手に戈［ホコ］を執り舞ふのである。｜干の長さ約四尺幅上部九寸、下部七寸七部で、先きが三角に尖り、表面の上方一尺四寸ばかりの処には竜頭（本廟のものは虎の如く見える）が画かれ、其の下方には普通五彩の竜花があるのであるが、本廟のものは簡単なる模様あるに過ぎない、又干の裏には執手があり、持つに便利なやうになつてゐる。次に戈の戚頭の長さ六尺五分、寛五寸で、青色に塗られ、柄の長さは、二尺四寸五分ありて赤色で塗られてある。
  • 東廡の内部 金州孔子廟大成殿の前方東西両側に各々一棟の建物が相対してあり、一を東廡、他を西廡と云ふ。本写真は東廡の内部で、丁祭に際し先賢、先儒の神位に対して、供物を供へ祀つてゐる光景である。｜東廡に祀る神位は先賢、先儒同じ一列で、北より公孫子僑以下三十九位、其れに続いて先儒公羊子高以下三十四位並んである。｜西廡に祀る神位も亦東廡と同じく先賢、先儒同列で北より先賢蓬子瑗以下三十八位、続いて先儒穀梁子赤以下三十五位の神牌が並んでゐる。｜（印画の複製を禁ず）
    東廡の内部

    金州孔子廟大成殿の前方東西両側に各々一棟の建物が相対してあり、一を東廡、他を西廡と云ふ。本写真は東廡の内部で、丁祭に際し先賢、先儒の神位に対して、供物を供へ祀つてゐる光景である。｜東廡に祀る神位は先賢、先儒同じ一列で、北より公孫子僑以下三十九位、其れに続いて先儒公羊子高以下三十四位並んである。｜西廡に祀る神位も亦東廡と同じく先賢、先儒同列で北より先賢蓬子瑗以下三十八位、続いて先儒穀梁子赤以下三十五位の神牌が並んでゐる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 望燎 孔子廟の釈典に於て、送神の礼が終れば、各献官燎位に詣り、賛礼は幣帛及び祝文を撤し、西階より燎位に至り、祝文等を燎く。これを望燎といふのである。写真は俗に火池子と称するもので燎いてゐる処である。｜（印画の複製を禁ず）
    望燎

    孔子廟の釈典に於て、送神の礼が終れば、各献官燎位に詣り、賛礼は幣帛及び祝文を撤し、西階より燎位に至り、祝文等を燎く。これを望燎といふのである。写真は俗に火池子と称するもので燎いてゐる処である。｜（印画の複製を禁ず）
  • 金州眞武廟の古碑と銀杏樹 金州城内真武廟の境内に古碑二基あり、一は正徳五年建立の重修玄天上帝行祠記の古碑で、それには「正徳四年柒月拾陸日起事。越明年陸月拾五日告成」の記ありて、本廟が既に正徳五年（西記・一五一〇）重修されしことを伝へてゐる。他の碑は万暦年間建立の碑で、重修上帝行祠記と題するものなれども、全面殆と風化して判読不可能のものである。写真の前面の碑は正徳年間のもので、万暦の碑は西方に在りて見えない。｜本廟の前に亭亭と青空高く伸ぶ銀杏樹二本相対してあり。共に雌にして数知れぬ実が枝も撓になつてゐる。大和尚山響水寺の銀杏樹と共に関東州内では珍しきものであらう。｜（印画の複製を禁ず）
    金州眞武廟の古碑と銀杏樹

    金州城内真武廟の境内に古碑二基あり、一は正徳五年建立の重修玄天上帝行祠記の古碑で、それには「正徳四年柒月拾陸日起事。越明年陸月拾五日告成」の記ありて、本廟が既に正徳五年（西記・一五一〇）重修されしことを伝へてゐる。他の碑は万暦年間建立の碑で、重修上帝行祠記と題するものなれども、全面殆と風化して判読不可能のものである。写真の前面の碑は正徳年間のもので、万暦の碑は西方に在りて見えない。｜本廟の前に亭亭と青空高く伸ぶ銀杏樹二本相対してあり。共に雌にして数知れぬ実が枝も撓になつてゐる。大和尚山響水寺の銀杏樹と共に関東州内では珍しきものであらう。｜（印画の複製を禁ず）
  • 金州眞武廟の雷神（雷公） 支那では「雷を天地の鼓」（抱朴子）とか、或は「径長千里の石鼓」（任昉述異記）と云ひ、雷神を画くに左手に連鼓を持ち、右手に椎をとる状のものや、又本写真の塑像の如く、鬼貌の力士の状に造り、裸胸袒腹、背に両翅あり、顔口裂け鳥の嘴の如く尖り、手の爪鋭く、足鷹の如く三趾となり爪鋭く尖り、左手に楔をとり、右手に槌を持ち撃たんとする姿態を以て表現するものもある。｜（印画の複製を禁ず）
    金州眞武廟の雷神（雷公）

    支那では「雷を天地の鼓」（抱朴子）とか、或は「径長千里の石鼓」（任昉述異記）と云ひ、雷神を画くに左手に連鼓を持ち、右手に椎をとる状のものや、又本写真の塑像の如く、鬼貌の力士の状に造り、裸胸袒腹、背に両翅あり、顔口裂け鳥の嘴の如く尖り、手の爪鋭く、足鷹の如く三趾となり爪鋭く尖り、左手に楔をとり、右手に槌を持ち撃たんとする姿態を以て表現するものもある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 金州眞武廟の閃神（雷母） 本写真は雷母（閃神）の塑像であるが、其の容貌女の如く頗る端麗、美服を着け、両手に各々鏡を執り、高く挙げ、鏡中より閃光を発してゐる状を以て表現してある。｜（印画の複製を禁ず）
    金州眞武廟の閃神（雷母）

    本写真は雷母（閃神）の塑像であるが、其の容貌女の如く頗る端麗、美服を着け、両手に各々鏡を執り、高く挙げ、鏡中より閃光を発してゐる状を以て表現してある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 大石棚 大石棚は小石棚の南東、碧雲寺の近くの畑の中に在り甚だしく破壊されて大きさは明かではないが、残存の石壁の高さは約二米、幅約二米、石の厚さは約三十糎あり小石棚と同時代のもので、共に石質は片磨岩である。｜欧洲ではドルメンを巨人の墓場とか、フン民族の寝床とか伝へられてゐるが、是れ等の石棚は家屋と云はれて次の如き伝説がある。「昔唐の太宗に従つて高勾麗［高句麗］を征伐に来た薛仁貴が、此の丘上にさしかゝつた時、突然大雨が沛然として降り出して来たので、大変困り、小黒山へ走つて行き、大石を持つて来て急造の石小屋を造り大雨を避けたものが、現存の大小石棚だ」と伝へ、又昔高勾麗［高句麗］人が丘上で牧畜をして居た時、小黒山より石を持つて来て、石小屋を造り見張りをして居た処である」と、或は「天井石には薛仁貴の大きな足跡がある」等とも語り伝へられてゐる。｜尚此の地方の土民は石棚を神聖なものとし、此の石棚を破壊すると祟りがあると云ひ、昔一石工がこれを破壊せんとして病死したと伝へられてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
    大石棚

    大石棚は小石棚の南東、碧雲寺の近くの畑の中に在り甚だしく破壊されて大きさは明かではないが、残存の石壁の高さは約二米、幅約二米、石の厚さは約三十糎あり小石棚と同時代のもので、共に石質は片磨岩である。｜欧洲ではドルメンを巨人の墓場とか、フン民族の寝床とか伝へられてゐるが、是れ等の石棚は家屋と云はれて次の如き伝説がある。「昔唐の太宗に従つて高勾麗［高句麗］を征伐に来た薛仁貴が、此の丘上にさしかゝつた時、突然大雨が沛然として降り出して来たので、大変困り、小黒山へ走つて行き、大石を持つて来て急造の石小屋を造り大雨を避けたものが、現存の大小石棚だ」と伝へ、又昔高勾麗［高句麗］人が丘上で牧畜をして居た時、小黒山より石を持つて来て、石小屋を造り見張りをして居た処である」と、或は「天井石には薛仁貴の大きな足跡がある」等とも語り伝へられてゐる。｜尚此の地方の土民は石棚を神聖なものとし、此の石棚を破壊すると祟りがあると云ひ、昔一石工がこれを破壊せんとして病死したと伝へられてゐる。｜（印画の複製を禁ず）
  • 石棚（ドルメン） （普蘭店） 普蘭店を距る五里亮甲店附近に大小二箇の石棚がある。これはその一つである。歷史以前石器時代の遺物であつて三千年以前此の地方に在つた東古斯族の遺跡と云ふ事が發見された。此の民族は當時遼陽附近太子河を境として居住しそれを境とした南北の民族は全然趣を異にして居たと稱せられる。｜（印畫の複製を禁ず）
    石棚（ドルメン） （普蘭店）

    普蘭店を距る五里亮甲店附近に大小二箇の石棚がある。これはその一つである。歷史以前石器時代の遺物であつて三千年以前此の地方に在つた東古斯族の遺跡と云ふ事が發見された。此の民族は當時遼陽附近太子河を境として居住しそれを境とした南北の民族は全然趣を異にして居たと稱せられる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 萬家嶺の石硼 （南滿本線） 滿鐵本線萬家嶺驛の東方約一里半位の地点山の中腹にあり石硼を中芯として建築せられてゐる。廟の創始はを乾隆年間である最近は石垣を築き磴道の階段も新に寺廟の風致もよい石硼は娘々を祭つてゐて參詣者の出入は自由である。｜（印畫の複製を禁ず）
    萬家嶺の石硼 （南滿本線）

    滿鐵本線萬家嶺驛の東方約一里半位の地点山の中腹にあり石硼を中芯として建築せられてゐる。廟の創始はを乾隆年間である最近は石垣を築き磴道の階段も新に寺廟の風致もよい石硼は娘々を祭つてゐて參詣者の出入は自由である。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 九塞の石硼 （滿鐵本線） 許家屯驛を發すれば僅かにして車窓から西方展望すれば欝蒼たる松樹が丘陵の上に現れるこれが石硼山古雲寺である九塞驛よりは西南約一里半位山上の廣き平地の上に在る現在は廟の建物となつて娘々を祀る天井なせる上部の覆石は長さ二丈八尺、幅一丈八尺、厚さ一尺八寸位の花崗石、支石の高さ七尺五寸五分位で現在では滿洲第一の石硼である。｜（印畫の複製を禁ず）
    九塞の石硼 （滿鐵本線）

    許家屯驛を發すれば僅かにして車窓から西方展望すれば欝蒼たる松樹が丘陵の上に現れるこれが石硼山古雲寺である九塞驛よりは西南約一里半位山上の廣き平地の上に在る現在は廟の建物となつて娘々を祀る天井なせる上部の覆石は長さ二丈八尺、幅一丈八尺、厚さ一尺八寸位の花崗石、支石の高さ七尺五寸五分位で現在では滿洲第一の石硼である。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 分水のドルメン （滿鐵本線） 分水驛の東方約一里半の地点山間の丘陵に在り台地に登れば附近の村落を隔て遙に雄大なる景觀が展望される石硼の石質は花崗石、東面を除く外は完全である天井石の厚さ四五糎、幅四、一六米、長さ四、七七米、壁石の高さ一、九〇米、厚さ三八糎古色蒼然たる姿は偉觀である｜（印畫の複製を禁ず）
    分水のドルメン （滿鐵本線）

    分水驛の東方約一里半の地点山間の丘陵に在り台地に登れば附近の村落を隔て遙に雄大なる景觀が展望される石硼の石質は花崗石、東面を除く外は完全である天井石の厚さ四五糎、幅四、一六米、長さ四、七七米、壁石の高さ一、九〇米、厚さ三八糎古色蒼然たる姿は偉觀である｜（印畫の複製を禁ず）
  • 姑嫂石 （析木城） 南滿本線海城驛の東方約五里廿五町の地点にある、析木城を東南へ岫巖街道を約一里位辿れば遙かに山上の松樹の間からくろずんだ巨石が展望される。これが完存してゐる姑嫂石だる近くるつれてその姿が明僚と成て來る更に山をを登れた、巨大なる、花崗岩の磐石其の堂々たるに驚異せざるを得ない。高さ五尺四五寸、蓋石の長さは二丈數尺同石の厚さ幅さは之れに適へりされど内部は一物も留めざるは遺憾である。｜（印畫の複製を禁ず）
    姑嫂石 （析木城）

    南滿本線海城驛の東方約五里廿五町の地点にある、析木城を東南へ岫巖街道を約一里位辿れば遙かに山上の松樹の間からくろずんだ巨石が展望される。これが完存してゐる姑嫂石だる近くるつれてその姿が明僚と成て來る更に山をを登れた、巨大なる、花崗岩の磐石其の堂々たるに驚異せざるを得ない。高さ五尺四五寸、蓋石の長さは二丈數尺同石の厚さ幅さは之れに適へりされど内部は一物も留めざるは遺憾である。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 姑雙（女偏）石 （析木城） 岫巖に趣く途上左側山に接した畑地の隅に在り巨大なる蓋石、側石の破壞せられ僅に天井石のみ大きさを來してゐる。これ等二個のドルメンは、明治二十七八年日淸戰爭の休戰中に鳥居博士の發見せられたものである傳說に曰ふ昔二女あり石に登りて仙と成ると｜（印畫の複製を禁ず）
    姑雙（女偏）石 （析木城）

    岫巖に趣く途上左側山に接した畑地の隅に在り巨大なる蓋石、側石の破壞せられ僅に天井石のみ大きさを來してゐる。これ等二個のドルメンは、明治二十七八年日淸戰爭の休戰中に鳥居博士の發見せられたものである傳說に曰ふ昔二女あり石に登りて仙と成ると｜（印畫の複製を禁ず）
  • 通化縣内の石硼 同県旺清辺門の東方約五那里許り高力城子を過ぎて蜊帖河川の渡船場を北岸に渡り約一里位の北方の山麓の丘上にあり尚を此の地も二個ありその一は山下にあれど即ち崩壊し僅かに存在するに過ぎぬ大きさは略々前者に同一程度である。この写真は其上部より見たる遠景である。｜（印画の複製を禁ず）
    通化縣内の石硼

    同県旺清辺門の東方約五那里許り高力城子を過ぎて蜊帖河川の渡船場を北岸に渡り約一里位の北方の山麓の丘上にあり尚を此の地も二個ありその一は山下にあれど即ち崩壊し僅かに存在するに過ぎぬ大きさは略々前者に同一程度である。この写真は其上部より見たる遠景である。｜（印画の複製を禁ず）
  • 通化縣の石硼 通化県の南方一里半位ひの地点大溝沙金鉱への通路があり其の東側の山間丘上に二個のドルメンがある、この写真は、其上部に在完存してゐる分で高さ四尺、横二尺五寸位、中央は五尺程の幅ありて覆石は長さ一間半横一位あるがトルメンとしては小なるものである。｜（印画の複製を禁ず）
    通化縣の石硼

    通化県の南方一里半位ひの地点大溝沙金鉱への通路があり其の東側の山間丘上に二個のドルメンがある、この写真は、其上部に在完存してゐる分で高さ四尺、横二尺五寸位、中央は五尺程の幅ありて覆石は長さ一間半横一位あるがトルメンとしては小なるものである。｜（印画の複製を禁ず）
  • メンヒル （安奉線） 鳳凰城の西南三義廟を經つて西方に行くこと約三那里許にして石柱子がある人家芝しき一村落なれど其の路傍の北側に一關帝廟ありこの廟前に一個の立石あり石質花崗岩粗雜に切り出せしものが多年の風雨に曝されし為め寫眞の如き狀を示す、に非ずやと思はれる傳說に依れば唐代欽天監の職に在りし天岡、李滈風の二人が建立せしものと曰へり。石の高さ約一丈、厚さは下部八寸上部は更に簿くなつてゐるされど古代の遺蹟たるは疑うべからずと｜（印畫の複製を禁ず）
    メンヒル （安奉線）

    鳳凰城の西南三義廟を經つて西方に行くこと約三那里許にして石柱子がある人家芝しき一村落なれど其の路傍の北側に一關帝廟ありこの廟前に一個の立石あり石質花崗岩粗雜に切り出せしものが多年の風雨に曝されし為め寫眞の如き狀を示す、に非ずやと思はれる傳說に依れば唐代欽天監の職に在りし天岡、李滈風の二人が建立せしものと曰へり。石の高さ約一丈、厚さは下部八寸上部は更に簿くなつてゐるされど古代の遺蹟たるは疑うべからずと｜（印畫の複製を禁ず）
  • 十三里台の台子 本台子は金州管内二十里堡会十三里台の部落の北、金普道路の旧道の近くに在り、石築有郭方台形のものである。崩れてはゐるが、残存部の郭は東西約二〇・九米、南北約一七・七米、台の基部約九・五米平方にして、高さ約五米あり。台の後方に小廟がある。此の台子は平地にあれば烽火台よりは路台として旅行者や居住民の安全をはかつたものであらう。（写真は北側）｜（印画の複製を禁ず）
    十三里台の台子

    本台子は金州管内二十里堡会十三里台の部落の北、金普道路の旧道の近くに在り、石築有郭方台形のものである。崩れてはゐるが、残存部の郭は東西約二〇・九米、南北約一七・七米、台の基部約九・五米平方にして、高さ約五米あり。台の後方に小廟がある。此の台子は平地にあれば烽火台よりは路台として旅行者や居住民の安全をはかつたものであらう。（写真は北側）｜（印画の複製を禁ず）
  • 三十里屯の台子 本台子は普蘭店管内三十里堡会三十里屯の部の北、金普道路の西側に在り、殆ど崩壊に瀕してゐるが、州内では永安台と共に甎築円台形の台子で、台の高さ約九米、周囲は崩れて測ることが出来ないが、基部が約　　米位あるであらう。郭は石郭であるが、これも亦崩れてゐるが、一籩二十数米平方である。此の台子は柳辺紀略に「路台・・・体円ク大磚ヲ以テ之ヲ為ル」の記に一致し、又平地の道路の側にあるものであれば、主として旅行者や居住者の安全をはかる路台の用をなしたものであらう　（写真は東南面）
    三十里屯の台子

    本台子は普蘭店管内三十里堡会三十里屯の部の北、金普道路の西側に在り、殆ど崩壊に瀕してゐるが、州内では永安台と共に甎築円台形の台子で、台の高さ約九米、周囲は崩れて測ることが出来ないが、基部が約　　米位あるであらう。郭は石郭であるが、これも亦崩れてゐるが、一籩二十数米平方である。此の台子は柳辺紀略に「路台・・・体円ク大磚ヲ以テ之ヲ為ル」の記に一致し、又平地の道路の側にあるものであれば、主として旅行者や居住者の安全をはかる路台の用をなしたものであらう　（写真は東南面）
  • 石河城 本城は石河駅の西、石河の東岸に在り。石城にして、城壁は東側及北側並に南側の一部残存してゐるのみである。城壁の高さ約六・六米、幅三・六米、南北の長さ約二六七米、門は南と北に各一門あり。｜本城の創めて築かれた時代は詳かでないが、明代になる遼東志金州衛の地図に石河堡の記載があれば、明代に既にありしことが明かである。尚盛京通志巻二十九寧海県の条に「石河駅堡。城（金州）北六十里。周囲一里二百四十歩。南北二門。我太祖高皇帝辛酉年。征明撫降之。今設汎焉」とある。（写真は城の東側）
    石河城

    本城は石河駅の西、石河の東岸に在り。石城にして、城壁は東側及北側並に南側の一部残存してゐるのみである。城壁の高さ約六・六米、幅三・六米、南北の長さ約二六七米、門は南と北に各一門あり。｜本城の創めて築かれた時代は詳かでないが、明代になる遼東志金州衛の地図に石河堡の記載があれば、明代に既にありしことが明かである。尚盛京通志巻二十九寧海県の条に「石河駅堡。城（金州）北六十里。周囲一里二百四十歩。南北二門。我太祖高皇帝辛酉年。征明撫降之。今設汎焉」とある。（写真は城の東側）
  • 石河驛石堡寺 石河城の南門外に在り。釈迦を祀る。創建年代は明かではないが、境成に康煕五十九年（西紀一七二〇）の重修碑等あれば、明代既に建立されたものと思はる。碑として磨減して判読の出来ないもの及び嘉慶、光緒年間等のものがある。｜（印画の複製を禁ず）
    石河驛石堡寺

    石河城の南門外に在り。釈迦を祀る。創建年代は明かではないが、境成に康煕五十九年（西紀一七二〇）の重修碑等あれば、明代既に建立されたものと思はる。碑として磨減して判読の出来ないもの及び嘉慶、光緒年間等のものがある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 小黑山佛爺廟 小黒山は石河駅の東に聳ゆる山にして、金州の大黒山（大和尚山）に対して、小黒山と云ふ。海抜一千五百六十二尺で甚だ嶮崚。風景頗る佳である。頂上の近くの懸崖に小廟あり、仏爺廟と云ふ。釈迦、観音、地蔵の石仏等を祀る。廟は岩を鑿つて造つたものである。本廟は民国十年十月敬立の碑にすれば、民国六年（大正六年）石工を督して造りしものである。｜尚小黒山は全山殆と片磨岩と云ふべく、石切場となつてゐる。又先史時代の遺蹟地でもある。｜（印画の複製を禁ず）
    小黑山佛爺廟

    小黒山は石河駅の東に聳ゆる山にして、金州の大黒山（大和尚山）に対して、小黒山と云ふ。海抜一千五百六十二尺で甚だ嶮崚。風景頗る佳である。頂上の近くの懸崖に小廟あり、仏爺廟と云ふ。釈迦、観音、地蔵の石仏等を祀る。廟は岩を鑿つて造つたものである。本廟は民国十年十月敬立の碑にすれば、民国六年（大正六年）石工を督して造りしものである。｜尚小黒山は全山殆と片磨岩と云ふべく、石切場となつてゐる。又先史時代の遺蹟地でもある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 小黑山蓋蘇文洞 小黒山仏爺廟下に蓋蘇文洞なる洞窟があり、十数人を容れるに足る。伝説によれば蓋蘇文は高句麗の将軍にして、唐軍と戦ひ、利あらずして此の洞窟に隠れたる処と云ふ。併しこれは単なる伝説で真を置くことが出来ない。泉蓋蘇文は高句麗王朝の権臣にして、国王を弑して、宝蔵王を擁立し、国政を専らにし、屡々新羅や唐と戦ひ大いに勝利を得たが、其の子に至つて、唐将李勣の為めに滅ぼされた、｜（印画の複製を禁ず）
    小黑山蓋蘇文洞

    小黒山仏爺廟下に蓋蘇文洞なる洞窟があり、十数人を容れるに足る。伝説によれば蓋蘇文は高句麗の将軍にして、唐軍と戦ひ、利あらずして此の洞窟に隠れたる処と云ふ。併しこれは単なる伝説で真を置くことが出来ない。泉蓋蘇文は高句麗王朝の権臣にして、国王を弑して、宝蔵王を擁立し、国政を専らにし、屡々新羅や唐と戦ひ大いに勝利を得たが、其の子に至つて、唐将李勣の為めに滅ぼされた、｜（印画の複製を禁ず）
  • 五里台子 石河城の北約一里、金普道路の東に沿ふてあり。石築方台形、有郭のものにして、郭の大きさは東西約二〇・三米、南北二一・四米。あり、台は基部は南北六・二米、東西一〇・二米、高さ約九米あり。全く十三里台の台子の形式と同じもので、主として旅行者や居住民の保護をはかつた路台の用をなしたものであらう。｜（印画の複製を禁ず）
    五里台子

    石河城の北約一里、金普道路の東に沿ふてあり。石築方台形、有郭のものにして、郭の大きさは東西約二〇・三米、南北二一・四米。あり、台は基部は南北六・二米、東西一〇・二米、高さ約九米あり。全く十三里台の台子の形式と同じもので、主として旅行者や居住民の保護をはかつた路台の用をなしたものであらう。｜（印画の複製を禁ず）
  • 長店堡準提菩薩廟 本廟は石河駅の北方一里半、長店堡の村落にあり。本殿に準提菩薩を中央にして眼光、子孫、症姑、耳光等の娘々を祀り、殿内に王永江書の「潜幽著霊の扃額をかゝぐ。境内に薬王殿、九聖祠及乾隆四十五年（西紀一七八〇）同治二年（西紀一八六三）光緒三十一年（西記一九〇五）等の準提廟碑誌があり、長店堡は昔は長店鋪或は長甸堡と云ひ、一層古くは向陽鋪と称したことが書いてある。｜（印画の複製を禁ず）
    長店堡準提菩薩廟

    本廟は石河駅の北方一里半、長店堡の村落にあり。本殿に準提菩薩を中央にして眼光、子孫、症姑、耳光等の娘々を祀り、殿内に王永江書の「潜幽著霊の扃額をかゝぐ。境内に薬王殿、九聖祠及乾隆四十五年（西紀一七八〇）同治二年（西紀一八六三）光緒三十一年（西記一九〇五）等の準提廟碑誌があり、長店堡は昔は長店鋪或は長甸堡と云ひ、一層古くは向陽鋪と称したことが書いてある。｜（印画の複製を禁ず）
  • 長店堡準提菩薩 石河駅の北方里余、長店堡に準提菩薩を祀る廟あり。準提菩薩は又准肹（旁は弓）観音とも云ひ、七観音の一、胎蔵界曼茶羅では仏眼仏母の傍に位し、又蓮茎母の仏母で、七倶肹（旁は弓）仏母とも云はる。形像は一面十八臂あり、説法相をなし、施無畏印を結び、宝剣を握り、或は賢瓶、索、金剛杵等を持してゐる。この菩薩を念ずれば、息災、延命、求児、除病等の霊顕があると云ふ。｜（印画の複製を禁ず）
    長店堡準提菩薩

    石河駅の北方里余、長店堡に準提菩薩を祀る廟あり。準提菩薩は又准肹（旁は弓）観音とも云ひ、七観音の一、胎蔵界曼茶羅では仏眼仏母の傍に位し、又蓮茎母の仏母で、七倶肹（旁は弓）仏母とも云はる。形像は一面十八臂あり、説法相をなし、施無畏印を結び、宝剣を握り、或は賢瓶、索、金剛杵等を持してゐる。この菩薩を念ずれば、息災、延命、求児、除病等の霊顕があると云ふ。｜（印画の複製を禁ず）
  • 長店堡準提廟內の喉神 石河駅北の長店堡準提廟内に喉神と称する三尺余の殆と表面磨滅したる石像がある。喉神は又喉官老爺と云ひ咳の神で、此の像に塩大根焼餅等を供へて祈れば咳が止まると云ひ、土民の信仰が深い。｜（印画の複製を禁ず）
    長店堡準提廟內の喉神

    石河駅北の長店堡準提廟内に喉神と称する三尺余の殆と表面磨滅したる石像がある。喉神は又喉官老爺と云ひ咳の神で、此の像に塩大根焼餅等を供へて祈れば咳が止まると云ひ、土民の信仰が深い。｜（印画の複製を禁ず）
  • 狐仙の碑 （關東州） 金州城の東南隅靈神廟に接して狐仙の墓壹基ありその墓碑銘に曰く｜攷自窵古近今。凡宇宙靈秀之粍鐘毓於人則為聖為神。鐘毓於物則為仙為靈。有歷歷不爽者矣。金城北門樓。上古有狐仙一位。靈顯素著何于昔年間。偶遭凶憫遽罹。仙數當徑。劉君萬昌為之卜。葬於靈神廟側。茲後首倡義擧。爰勒碑銘。而願助者。躩踴于前。樂輸者追隨于後。謹將芳名臚刻於左。｜金州公議會（人名省略）｜光緒三十三年十二月穀旦｜と又次の碑に、｜郡內東靈神廟。有胡大仙墓。屢顯神通。凡郡人之虔誠禮祝。無不靈應。吾儕感激。因而勒諸石。是以任其操勞者。張等賛而成者。吳等數人此擧也。非徒發於一心之善念。窈以表聖德於萬一耳。俯冀大仙保被。郡人佑我吉士福如日起災逐。塵消吾儕有厚望焉。旦以銘感焉。爰為之歌曰。靑山蒼茫。碧海汪洋。大仙之英。天地同壽。日月爭光。｜（人名省略）｜光緒三十四年正月十五日｜とあるが、實は劉氏が酒に醉ふて城壁上に寢てゐた老狐を殺した處、其の祟りを受け、飯を食はんとしても飯がなくなり、或は水を飲まんとすると火になる等種々の奇怪なことが續き重病になつたので、恐れて狐を厚く葬り靈を祀つたのであると云ふ。
    狐仙の碑 （關東州）

    金州城の東南隅靈神廟に接して狐仙の墓壹基ありその墓碑銘に曰く｜攷自窵古近今。凡宇宙靈秀之粍鐘毓於人則為聖為神。鐘毓於物則為仙為靈。有歷歷不爽者矣。金城北門樓。上古有狐仙一位。靈顯素著何于昔年間。偶遭凶憫遽罹。仙數當徑。劉君萬昌為之卜。葬於靈神廟側。茲後首倡義擧。爰勒碑銘。而願助者。躩踴于前。樂輸者追隨于後。謹將芳名臚刻於左。｜金州公議會（人名省略）｜光緒三十三年十二月穀旦｜と又次の碑に、｜郡內東靈神廟。有胡大仙墓。屢顯神通。凡郡人之虔誠禮祝。無不靈應。吾儕感激。因而勒諸石。是以任其操勞者。張等賛而成者。吳等數人此擧也。非徒發於一心之善念。窈以表聖德於萬一耳。俯冀大仙保被。郡人佑我吉士福如日起災逐。塵消吾儕有厚望焉。旦以銘感焉。爰為之歌曰。靑山蒼茫。碧海汪洋。大仙之英。天地同壽。日月爭光。｜（人名省略）｜光緒三十四年正月十五日｜とあるが、實は劉氏が酒に醉ふて城壁上に寢てゐた老狐を殺した處、其の祟りを受け、飯を食はんとしても飯がなくなり、或は水を飲まんとすると火になる等種々の奇怪なことが續き重病になつたので、恐れて狐を厚く葬り靈を祀つたのであると云ふ。
  • 淸國軍人戰亡碑 （關東州） 本碑は金州城西門外屯北大河の河畔に在り。明治廿七年十一月六日金州城陷落及び同月廿一日の淸兵逆襲戰に際し戰死せる清國の將卒の靈を祀るべく、廿八年五月我が第二軍司令官大山大將及茨木少將の建立せるものである。碑の高さ四尺三寸、幅一尺五寸、厚さ五寸清國軍人戰亡碑と題し、其の忠魂を弔ふ。是れ誠に日本精神の表れにして美擧と云ふべきである。
    淸國軍人戰亡碑 （關東州）

    本碑は金州城西門外屯北大河の河畔に在り。明治廿七年十一月六日金州城陷落及び同月廿一日の淸兵逆襲戰に際し戰死せる清國の將卒の靈を祀るべく、廿八年五月我が第二軍司令官大山大將及茨木少將の建立せるものである。碑の高さ四尺三寸、幅一尺五寸、厚さ五寸清國軍人戰亡碑と題し、其の忠魂を弔ふ。是れ誠に日本精神の表れにして美擧と云ふべきである。
  • 二十里堡の烽火台 本烽火台は二十里台駅の東北約一里、台山にあり、車窓よりも望むことが出来る。烽火台としては最も標式的なもので、殆と完全に残つてゐる。｜石築方台形、有郭である。郭の大きさは南北約二〇・二米、東西二〇・四米高さは約二米、台の高さ約六・六米、基部の広さ、南北七・八米、東西七・一米である。｜尚此の烽火台の特色としては郭の外に又郭があることで西側にはそれが明かに残てゐる。尚台の最上部には煉瓦が敷かれてあるのであるが、その中に漢代と思はれる有紋甎があることは注意すべきであろう。（写真は西南側）
    二十里堡の烽火台

    本烽火台は二十里台駅の東北約一里、台山にあり、車窓よりも望むことが出来る。烽火台としては最も標式的なもので、殆と完全に残つてゐる。｜石築方台形、有郭である。郭の大きさは南北約二〇・二米、東西二〇・四米高さは約二米、台の高さ約六・六米、基部の広さ、南北七・八米、東西七・一米である。｜尚此の烽火台の特色としては郭の外に又郭があることで西側にはそれが明かに残てゐる。尚台の最上部には煉瓦が敷かれてあるのであるが、その中に漢代と思はれる有紋甎があることは注意すべきであろう。（写真は西南側）
  • 三十里堡の蟒仙洞 三十里堡駅の東数町、岔山へ通ずる道路の北側の丘に洞窟あり、蟒小哥蟒金煥等の蟒仙を祀る。祈れば仙薬を授くるとて、近郷部落民の信仰が厚い。一種の流行神である。
    三十里堡の蟒仙洞

    三十里堡駅の東数町、岔山へ通ずる道路の北側の丘に洞窟あり、蟒小哥蟒金煥等の蟒仙を祀る。祈れば仙薬を授くるとて、近郷部落民の信仰が厚い。一種の流行神である。
  • 孛蘭舖城 （關東州） 本城は普蘭店驛の東北約半里貔子窩道路の北側に在り。城壁は殆と崩壞され、纔に南側が當時の面影を傳ふのみである。｜城の大きさは南北約一六五米、東西九六・四米、城壁の高さ城門の處約五・四五米幅一・九米あり。門は一門にして南側にあり、煉瓦にてアーチ形をなし、上に孛蘭舖萬曆十一年の銘がある。果して此の石額は萬曆年間に本城を築造せることを示すものなるかは疑問ではあるが、本城の築造が明代を降らぬことを示すものであらう。｜城内に關帝廟あり、乾隆四時年四月の銘を有する磬あり、｜尚此の地を古來孛蘭舖又は孛蘭店と稱し、現在の普蘭店の名稱はこれに因るのである。又孛蘭は蒙古語であると云ふ。　　（寫眞は南門）
    孛蘭舖城 （關東州）

    本城は普蘭店驛の東北約半里貔子窩道路の北側に在り。城壁は殆と崩壞され、纔に南側が當時の面影を傳ふのみである。｜城の大きさは南北約一六五米、東西九六・四米、城壁の高さ城門の處約五・四五米幅一・九米あり。門は一門にして南側にあり、煉瓦にてアーチ形をなし、上に孛蘭舖萬曆十一年の銘がある。果して此の石額は萬曆年間に本城を築造せることを示すものなるかは疑問ではあるが、本城の築造が明代を降らぬことを示すものであらう。｜城内に關帝廟あり、乾隆四時年四月の銘を有する磬あり、｜尚此の地を古來孛蘭舖又は孛蘭店と稱し、現在の普蘭店の名稱はこれに因るのである。又孛蘭は蒙古語であると云ふ。　　（寫眞は南門）
  • 土城子の城址 （關東州） 本城址は土城子會々事務所の南西數町の處に在り。殆と崩れて纔に西壁及び北壁の一部を存するに過ぎない。南北約一三八・七米、東西は推定するに約一二〇米位と思はる。築造年代は不明であるが、城中より多數の宋錢を出土せることありと云ふ。｜（寫眞は西北の城壁）
    土城子の城址 （關東州）

    本城址は土城子會々事務所の南西數町の處に在り。殆と崩れて纔に西壁及び北壁の一部を存するに過ぎない。南北約一三八・七米、東西は推定するに約一二〇米位と思はる。築造年代は不明であるが、城中より多數の宋錢を出土せることありと云ふ。｜（寫眞は西北の城壁）
  • 二龍山廟 （關東州） 本廟は土城子會唐房の警察官吏派出所の東北里餘の二龍山麓に在り、湧泉宮娘々廟とも稱し、乾隆丁酉年の建立にして、本殿に珍しくも碧霞元君を主神とし、三霄娘々守門女將軍等を祀る。邱祖龍門派に屬す。本廟の東に接し小廟あり石佛を祀る。水旱に祈れば靈顯ありと云ひ、昔二龍山中より出土し、運搬し此の地に至りて動かぬ為め、此處に廟を建てゝ祀ると。又此の石佛は凶時あれば汗出ずと傳へられてゐる。
    二龍山廟 （關東州）

    本廟は土城子會唐房の警察官吏派出所の東北里餘の二龍山麓に在り、湧泉宮娘々廟とも稱し、乾隆丁酉年の建立にして、本殿に珍しくも碧霞元君を主神とし、三霄娘々守門女將軍等を祀る。邱祖龍門派に屬す。本廟の東に接し小廟あり石佛を祀る。水旱に祈れば靈顯ありと云ひ、昔二龍山中より出土し、運搬し此の地に至りて動かぬ為め、此處に廟を建てゝ祀ると。又此の石佛は凶時あれば汗出ずと傳へられてゐる。
  • 三樓石 （關東州） 三樓石は土城子會唐房警察官吏派出所の東北約一里、二龍山廟の西丘上に在り。本寫眞の如く三個の巨石よりなる。最下の巨石の大きさは、周圍約一二・三米、高さ約一・六五米で、其の上に周圍約一〇・四米、高さ約一・四米、の巨石があり、共に稍々直方体形をなし、最上部の巨石は周圍五・六米、高さ一・〇五米位稍々卵形狀をなしてゐる。｜蓋し中及上の兩巨石は人為的に持ち來たるものと思はれる。この所在丘及び附近には石器時代の遺物包含層があれば、これを石器時代の巨石文化の一と想像することは、あながち牽強附會と一笑することは出來ないであらう。傳說によれば唐代薛禮が高勾麗征伐の時、自己の力量を見せる為めに積みあげたる巨石であると云ひ、又唐代牧馬の看視台として築いたものである等と云はる。
    三樓石 （關東州）

    三樓石は土城子會唐房警察官吏派出所の東北約一里、二龍山廟の西丘上に在り。本寫眞の如く三個の巨石よりなる。最下の巨石の大きさは、周圍約一二・三米、高さ約一・六五米で、其の上に周圍約一〇・四米、高さ約一・四米、の巨石があり、共に稍々直方体形をなし、最上部の巨石は周圍五・六米、高さ一・〇五米位稍々卵形狀をなしてゐる。｜蓋し中及上の兩巨石は人為的に持ち來たるものと思はれる。この所在丘及び附近には石器時代の遺物包含層があれば、これを石器時代の巨石文化の一と想像することは、あながち牽強附會と一笑することは出來ないであらう。傳說によれば唐代薛禮が高勾麗征伐の時、自己の力量を見せる為めに積みあげたる巨石であると云ひ、又唐代牧馬の看視台として築いたものである等と云はる。
  • 藥王 （關東州） 本藥王の神像は土城子會虫王廟屯の虫王廟にあり。伏羲は古來藥神として祀られてゐる。何となれば伏羲は六氣、六腑、五臟、五行、水火升降の理を言ひ、百病の理を類推し、百草を甞めで九鍼を制したと傳へられてゐる為めである。併し普通藥王と云ふと藥王慈藏苦文を云ふ。慈藏は即ち韋訊道の字で、唐代則天武后の侍醫となり累遷して光錄寺となつたが、平素黑犬を牽き病者に好んで藥を施し人を救つたので、藥王と云はれ死後藥王として神に祀られたと云ふ。｜尚本像の前に南無驛迦牟尼佛の位牌があるが。これは本像と何等關係のないものである。
    藥王 （關東州）

    本藥王の神像は土城子會虫王廟屯の虫王廟にあり。伏羲は古來藥神として祀られてゐる。何となれば伏羲は六氣、六腑、五臟、五行、水火升降の理を言ひ、百病の理を類推し、百草を甞めで九鍼を制したと傳へられてゐる為めである。併し普通藥王と云ふと藥王慈藏苦文を云ふ。慈藏は即ち韋訊道の字で、唐代則天武后の侍醫となり累遷して光錄寺となつたが、平素黑犬を牽き病者に好んで藥を施し人を救つたので、藥王と云はれ死後藥王として神に祀られたと云ふ。｜尚本像の前に南無驛迦牟尼佛の位牌があるが。これは本像と何等關係のないものである。
  • 馬王・虫王・牛王 （關東州） 寫眞は土城子會虫王廟屯の虫王廟に祀られてある馬王、虫王、牛王、の神像である。｜馬を棒持するは馬王、小瓶を右手に持するは虫王で、虫を封ずる意を表してゐる。次ぎに牛を棒持するは牛王である。是れ等の諸神は皆素朴な農民の心理的欲求が具現したものであらう。
    馬王・虫王・牛王 （關東州）

    寫眞は土城子會虫王廟屯の虫王廟に祀られてある馬王、虫王、牛王、の神像である。｜馬を棒持するは馬王、小瓶を右手に持するは虫王で、虫を封ずる意を表してゐる。次ぎに牛を棒持するは牛王である。是れ等の諸神は皆素朴な農民の心理的欲求が具現したものであらう。
  • 大理石の牌坊 （明の十三陵） 昌平から五里餘の北龍沙帶の上に在る碑坊嘉靖十九年の建立で五闕六楹の巨大なる姿が先づ明陵の莊嚴さを偲ばせるに足る。即ち地版石の長さ百二十三尺餘に幅が二十八尺もあり、中闕は十三尺に左右は十一尺と九尺と順次遽滅され屋根も之れに應じて低く調和し精巧透逸なる彫刻は明代の手法を傳へ、初は此の彫物に極彩色が施されてゐたらしいが今は其の痕跡すらないが實に壯觀、美觀を極む。｜（印畫の複製を禁ず）
    大理石の牌坊 （明の十三陵）

    昌平から五里餘の北龍沙帶の上に在る碑坊嘉靖十九年の建立で五闕六楹の巨大なる姿が先づ明陵の莊嚴さを偲ばせるに足る。即ち地版石の長さ百二十三尺餘に幅が二十八尺もあり、中闕は十三尺に左右は十一尺と九尺と順次遽滅され屋根も之れに應じて低く調和し精巧透逸なる彫刻は明代の手法を傳へ、初は此の彫物に極彩色が施されてゐたらしいが今は其の痕跡すらないが實に壯觀、美觀を極む。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 碑亭 （明の十三陵） 二重屋根に四方陛階の中に十六尺許の穹窿道が十字形に造られ、其の中に高さ二十七尺の碑が龜跌の上に若然と踏張つて立つ碑文には、『大明長陵神巧聖德碑』洪熙元年四月十七日孝嗣皇帝と刻まれ、碑陰には乾隆御製の長詩が彫られてゐる此の前後に各一對の公甲形石柱の華表が立ち表面には雲龍の薄肉彫がある。｜（印畫の複製を禁ず）
    碑亭 （明の十三陵）

    二重屋根に四方陛階の中に十六尺許の穹窿道が十字形に造られ、其の中に高さ二十七尺の碑が龜跌の上に若然と踏張つて立つ碑文には、『大明長陵神巧聖德碑』洪熙元年四月十七日孝嗣皇帝と刻まれ、碑陰には乾隆御製の長詩が彫られてゐる此の前後に各一對の公甲形石柱の華表が立ち表面には雲龍の薄肉彫がある。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 荒涼たる陵道 （明の十三陵） 天山一帶の山脈を脊景とせる松林の間に隱顯する各陵の黃色、朱壁、門樓の參差たる景觀を眺望しながら陵道を進めは、陵道の左右に六角形の華表その前に左右、石人、石獸が永い風雨に曝されながら或は立ち或は蹲んで各一對宛ならんでゐる。往時は松、柏、欝蒼たる間に眠つてゐたと傳へられるが今は一木たになく荒涼たるものだ。｜（印畫の複製を禁ず）
    荒涼たる陵道 （明の十三陵）

    天山一帶の山脈を脊景とせる松林の間に隱顯する各陵の黃色、朱壁、門樓の參差たる景觀を眺望しながら陵道を進めは、陵道の左右に六角形の華表その前に左右、石人、石獸が永い風雨に曝されながら或は立ち或は蹲んで各一對宛ならんでゐる。往時は松、柏、欝蒼たる間に眠つてゐたと傳へられるが今は一木たになく荒涼たるものだ。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 石獸 （明の十三陵） 道の左右に人馬、麒麟、駱駝、獬豸、獅子、各坐像、二十四石獸は各巨軀を各一對宛相對立し以て遠く聖夫子の英靈を守護しまつる。高さ十尺餘長さ十二尺前後幅六七尺の巨大なる行列が次々に各々特調ある婆が伺はれる。｜（印畫の複製を禁ず）
    石獸 （明の十三陵）

    道の左右に人馬、麒麟、駱駝、獬豸、獅子、各坐像、二十四石獸は各巨軀を各一對宛相對立し以て遠く聖夫子の英靈を守護しまつる。高さ十尺餘長さ十二尺前後幅六七尺の巨大なる行列が次々に各々特調ある婆が伺はれる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 石人 （明の十三陵） 石人は勳臣、文武の坐像、立像一對十二石人を三種に分ち遠く聖夫子の英靈を守護したてまつる、寫眞は武人像である、宜德實綠に據れば十年長陵と獸陵を修繕した際始めて石人、石馬を陵道の東西に置かれたとある。｜（印畫の複製を禁ず）
    石人 （明の十三陵）

    石人は勳臣、文武の坐像、立像一對十二石人を三種に分ち遠く聖夫子の英靈を守護したてまつる、寫眞は武人像である、宜德實綠に據れば十年長陵と獸陵を修繕した際始めて石人、石馬を陵道の東西に置かれたとある。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 長陵門 （明の十三陵） 雜草に蔽はれた磴道を進めば、柏樹がこんもりと繁つて、よく晴れた、秋空に長陵門は、豪壯に高く聳へ、仰視すればその建築は宏壯實に雄大な景觀である。｜（印畫の複製を禁ず）
    長陵門 （明の十三陵）

    雜草に蔽はれた磴道を進めば、柏樹がこんもりと繁つて、よく晴れた、秋空に長陵門は、豪壯に高く聳へ、仰視すればその建築は宏壯實に雄大な景觀である。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 長陵稜恩殿（一） （明の十三陵） 東西小角門の中には神帛爐が各一つづつある此の大庭の中央に在るのが稜恩殿で三成壇の上に立つ、九間二重庇の四方茸き下しの前面二百二十尺、側面九十五尺餘の豪壯無比なる大建築である、外には白石の欄を以て繞らし庭の老松は蒼然として相和し雅致を呈してゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
    長陵稜恩殿（一） （明の十三陵）

    東西小角門の中には神帛爐が各一つづつある此の大庭の中央に在るのが稜恩殿で三成壇の上に立つ、九間二重庇の四方茸き下しの前面二百二十尺、側面九十五尺餘の豪壯無比なる大建築である、外には白石の欄を以て繞らし庭の老松は蒼然として相和し雅致を呈してゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 長陵稜恩殿（二） （明の十三陵） 殿內の構造は、三十二本の大圓柱は周圍十一尺一高さ五十尺に垂んとする、大楠木を使用し中の四柱には金草模樣が備かれた、所謂藻井である。中央の楠木の大龕內には、皇帝の位牌を祀る。とまれ北支那に於て稀に見る、巨材を用いた建築の壯大さは長陵中の緯觀である。｜（印畫の複製を禁ず）
    長陵稜恩殿（二） （明の十三陵）

    殿內の構造は、三十二本の大圓柱は周圍十一尺一高さ五十尺に垂んとする、大楠木を使用し中の四柱には金草模樣が備かれた、所謂藻井である。中央の楠木の大龕內には、皇帝の位牌を祀る。とまれ北支那に於て稀に見る、巨材を用いた建築の壯大さは長陵中の緯觀である。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 恩陵 （明の十三陵） 陵は錦屏山に在る、昭陵の西南、西山口からは北一里の處熹宗の弟、崇順帝、即ち懷宗愍（民ではなく臣）皇帝の陵である。帝は李自成の亂に於て景山に溢死し慘なる哀史の主人公、この陵は他の帝陵よりは小規模ではあるが、後朝の餘澤に浴するものであるが、今は頗る癈しゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
    恩陵 （明の十三陵）

    陵は錦屏山に在る、昭陵の西南、西山口からは北一里の處熹宗の弟、崇順帝、即ち懷宗愍（民ではなく臣）皇帝の陵である。帝は李自成の亂に於て景山に溢死し慘なる哀史の主人公、この陵は他の帝陵よりは小規模ではあるが、後朝の餘澤に浴するものであるが、今は頗る癈しゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 明末の哀史 （明の十三陵） 雜草に蔽はれ、荒涼たる陵域、老松は枯れ墳墓も荒れ、訪ふ人もない、石碑、由緒を傳へるその龜跌に秋の夕陽は淡い光をなげてゐた。世にも慘として目を蔽ふべき哀史の主、殉節を全うした、王豕恩も帝に從葬せられ恩陵の西に眠てゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
    明末の哀史 （明の十三陵）

    雜草に蔽はれ、荒涼たる陵域、老松は枯れ墳墓も荒れ、訪ふ人もない、石碑、由緒を傳へるその龜跌に秋の夕陽は淡い光をなげてゐた。世にも慘として目を蔽ふべき哀史の主、殉節を全うした、王豕恩も帝に從葬せられ恩陵の西に眠てゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 東嶽廟の塑像 （北平） 東朝陽門外大街路の北にある。南宋の時に創建せられ元代の重建に係ると云ふ。境內廟宇の結構善美を極め廟內七十二司の塑像は名匠劉鑾の作にして、手法精妙である。寫眞は其の一部で廟會は每年陰歷三月十五日以後二週間として來寶者頗る多い。｜（印畫の複製を禁ず）
    東嶽廟の塑像 （北平）

    東朝陽門外大街路の北にある。南宋の時に創建せられ元代の重建に係ると云ふ。境內廟宇の結構善美を極め廟內七十二司の塑像は名匠劉鑾の作にして、手法精妙である。寫眞は其の一部で廟會は每年陰歷三月十五日以後二週間として來寶者頗る多い。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 黃寺の塔（一） （北平郊外） 安定門外大街の西に黃色の瓦屋を見るこれか黃寺で、東西、二寺に分つてゐる。喇嘛の駐錫道場で東黃寺は舊稱普靜禪林の謂にして境內東邊を占め西黃寺は西際に在り其の堂宇熟れも黃色の琉璃瓦を以て覆はるに因めり、淸の世祖（順治帝）頃未西藏西域懷柔の一方便として敕建せし所境內規模廣大にし老柏鬱蒼たる間に白塔はほのかに見る。｜（印畫の複製を禁ず）
    黃寺の塔（一） （北平郊外）

    安定門外大街の西に黃色の瓦屋を見るこれか黃寺で、東西、二寺に分つてゐる。喇嘛の駐錫道場で東黃寺は舊稱普靜禪林の謂にして境內東邊を占め西黃寺は西際に在り其の堂宇熟れも黃色の琉璃瓦を以て覆はるに因めり、淸の世祖（順治帝）頃未西藏西域懷柔の一方便として敕建せし所境內規模廣大にし老柏鬱蒼たる間に白塔はほのかに見る。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 黃寺の塔（二） （北平郊外） 寺の境內に、白塔が建つてゐる。乾隆四十四年帝の最も尊崇歸依せられし斑禪額爾德尼を西藏より北京に召見せんとしたるに不幸道半にして病を得示寂したるを以て帝は愛惜のあまり遺骸を西藏に送り衣を西黃寺の側に納め大理石の塔を建て德を頌せられた。塔の周圍に精巧妙致の彫刻、寫眞は其一部である。｜（印畫の複製を禁ず）
    黃寺の塔（二） （北平郊外）

    寺の境內に、白塔が建つてゐる。乾隆四十四年帝の最も尊崇歸依せられし斑禪額爾德尼を西藏より北京に召見せんとしたるに不幸道半にして病を得示寂したるを以て帝は愛惜のあまり遺骸を西藏に送り衣を西黃寺の側に納め大理石の塔を建て德を頌せられた。塔の周圍に精巧妙致の彫刻、寫眞は其一部である。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 白雲觀（一） （北平郊外） 順治門を出で城壁に添るて、西し西便門を出で更に西に進むこと數町にして白雲觀に達す元朝大極宮の故址にして道敎の本山、元朝の邱處機即ち長春眞人の開基に係り道敎中最も重要なる靈場である。殿宇宏莊、假山、花卉の景趣に富み、內外人の淸趣者多く毎年一月一日より十九日の開廟は、善男女の參詣者あり盛觀を極むと云ふ。｜（印畫の複製を禁ず）
    白雲觀（一） （北平郊外）

    順治門を出で城壁に添るて、西し西便門を出で更に西に進むこと數町にして白雲觀に達す元朝大極宮の故址にして道敎の本山、元朝の邱處機即ち長春眞人の開基に係り道敎中最も重要なる靈場である。殿宇宏莊、假山、花卉の景趣に富み、內外人の淸趣者多く毎年一月一日より十九日の開廟は、善男女の參詣者あり盛觀を極むと云ふ。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 白雲觀の牌樓（二） （北平郊外） 碑樓は白雲觀の正面に在り規模大にして其の精美なる、構造は一寸人目を引し揭額には、乾隆帝の御筆『洞大勝地』と題してゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
    白雲觀の牌樓（二） （北平郊外）

    碑樓は白雲觀の正面に在り規模大にして其の精美なる、構造は一寸人目を引し揭額には、乾隆帝の御筆『洞大勝地』と題してゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 道士の生活（三） （北平郊外） 白雲觀の第二門の中央に空濠があつて石橋が架り、こゝには道士達の修業すべき空洞がある、終日此處に靜座し瞑目、合掌、無我の境に入り或る者は、それ（それ）一日の念經の務めを濟度すれば、たまには、日當りよき庭に出でゝ和やかなる氣分に浸りながら、たわゝに語り會ふてゐる。老道士達の顏には、世相の憂苦をよそに善惡應報に惠まれて、餘世を過してゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
    道士の生活（三） （北平郊外）

    白雲觀の第二門の中央に空濠があつて石橋が架り、こゝには道士達の修業すべき空洞がある、終日此處に靜座し瞑目、合掌、無我の境に入り或る者は、それ（それ）一日の念經の務めを濟度すれば、たまには、日當りよき庭に出でゝ和やかなる氣分に浸りながら、たわゝに語り會ふてゐる。老道士達の顏には、世相の憂苦をよそに善惡應報に惠まれて、餘世を過してゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 大鐘寺の鐘樓（一） （北平郊外） 北平德勝門外、西北部、西直門より萬壽山に近きところに在る、庭樹の間に高く聳ゆるは鐘樓である。當寺は本名を覺生寺と稱し俗名を大鐘寺と云ふ。樓內には、大鐘が懸つてゐる。觀光の序に觀るも有益ひある。｜（印畫の複製を禁ず）
    大鐘寺の鐘樓（一） （北平郊外）

    北平德勝門外、西北部、西直門より萬壽山に近きところに在る、庭樹の間に高く聳ゆるは鐘樓である。當寺は本名を覺生寺と稱し俗名を大鐘寺と云ふ。樓內には、大鐘が懸つてゐる。觀光の序に觀るも有益ひある。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 大鐘まの鐘（二） （北平郊外） 大鐘は明朝永樂年間（西紀一四〇三－二四年）の鑄造に係ると稱せられ此の大鐘にちなんで俗に大鐘寺と呼ばれる、鐘の高さ約十五尺、口脛約十四尺、重量八万七千斤、即ち約五十二噸ありと、周圍の外面に經文字が前面に鑄刻せられてゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
    大鐘まの鐘（二） （北平郊外）

    大鐘は明朝永樂年間（西紀一四〇三－二四年）の鑄造に係ると稱せられ此の大鐘にちなんで俗に大鐘寺と呼ばれる、鐘の高さ約十五尺、口脛約十四尺、重量八万七千斤、即ち約五十二噸ありと、周圍の外面に經文字が前面に鑄刻せられてゐる。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 耶律楚材の像 （北平郊外） 像と墓は萬壽山正門の東側人家塀内に在り、乾隆帝の碑文は其の前に建つてゐる。幼少の時より好學の人で博く郡籍に精通じてゐつた。字晋卿といふ。元の太祖成吉思汗が金の燕京政めた時耶律楚材を見つて大に寵遇して帷幄に參せしめ、大宗か即位すると楚材を擧げて中書令とした、元朝の蒙古の風を變じ漢土の文物制度を折裏し立國の規模を建つたのは楚材の力でゐる元の太宗十五年（宋の淳和三年）紀元千九百三年（寬正元年）に卒し北京郊外西山に葬つたと。｜（印畫の複製を禁ず）
    耶律楚材の像 （北平郊外）

    像と墓は萬壽山正門の東側人家塀内に在り、乾隆帝の碑文は其の前に建つてゐる。幼少の時より好學の人で博く郡籍に精通じてゐつた。字晋卿といふ。元の太祖成吉思汗が金の燕京政めた時耶律楚材を見つて大に寵遇して帷幄に參せしめ、大宗か即位すると楚材を擧げて中書令とした、元朝の蒙古の風を變じ漢土の文物制度を折裏し立國の規模を建つたのは楚材の力でゐる元の太宗十五年（宋の淳和三年）紀元千九百三年（寬正元年）に卒し北京郊外西山に葬つたと。｜（印畫の複製を禁ず）
  • 金剛寶座 （北京郊外） 碧雲寺は香山の東麓に在り。寺城は元代に創開せられ、明正德、天啓中に進次重修を經つもので規模雄大である。石段を登れば金剛寶座に至る、謂所妙高台、傳ふる處によれば、乾隆十三年西僧印度須彌山の金剛寶座の模型を携へ入京したるを以て其の式に從い此處に建てたりと寶座は凡て大理石、背面に大なる黑玉の佛像を安置し莊嚴さを覺ゆる。｜（印畫の複製を禁ず）
    金剛寶座 （北京郊外）

    碧雲寺は香山の東麓に在り。寺城は元代に創開せられ、明正德、天啓中に進次重修を經つもので規模雄大である。石段を登れば金剛寶座に至る、謂所妙高台、傳ふる處によれば、乾隆十三年西僧印度須彌山の金剛寶座の模型を携へ入京したるを以て其の式に從い此處に建てたりと寶座は凡て大理石、背面に大なる黑玉の佛像を安置し莊嚴さを覺ゆる。｜（印畫の複製を禁ず）
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